町おこしからNASAまで、ハッカソンで生まれた種から課題解決につながる果実を育む

オープンイノベーション手法として知られるハッカソン。イベントとして楽しいだけじゃない、ビジネスに効くハッカソンとはどのようなものか、株式会社HackCamp 代表取締役社長の関治之が語ります。

課題解決のためのアイデアを生む、柔軟で奥深い手法

関治之

IT企業でエンジニアとして働いていた関が生まれて初めてハッカソンを体験したのはiPhoneがアメリカで発売された2007年のこと。日本では高機能化したガラケーの全盛期でした。

「同僚の誕生日に向けて、社内の仲間とNOKIAの端末にあるソフトウェアを仕込んだんです。特定の時間になると音楽が鳴り、それと同時に録画を開始して同僚の驚く表情を撮るというもの。同僚はものすごく喜んでくれました。こういう仕掛け作りが好きなメンバーとアイデアを出し合い、ものづくりをするのがとにかく楽しかったですね」(関)

面白いと思ったら、ひたすらその道を突き進む性分。大学はプロミュージシャンを目指すために中退。バンド活動に影響しない仕事としてプログラミングのアルバイトを始めたものの、いつのまにか音楽よりも夢中になっていました。やがてインターネットで世界とつながる愉しさを知り、GPSで広がる世界観に魅了され、技術に関心を持つ仲間とのネットワークも拡大。2009年ころからハッカソンやカンファレンスを自主開催することも増えました。

大きな転機になったのは2011年の東日本大震災です。仲間が立ち上げた復興支援プラットフォームsinsai.infoの運営などに携わるなかで、行政との日常的な連携が減災に有効だと気づいた関は、アメリカの事例に倣って一般社団法人コード・フォー・ジャパンを立ち上げました。この団体は市民が中心となってITを活用しながら公共サービスの開発や運営を支援することを目的に、現在も活発に活動しています。

また、2012年にアメリカ航空宇宙局(NASA)主催ハッカソンの日本版オーガナイザーを務めたことも大きな転機になりました。NASAのイベントのあと、大手小売業から「うちもハッカソンをやりたい」との相談を受けます。関はボランティアではなく、お金が回る仕組みを作ることで、品質の高いハッカソンを提供しようと決断、2014年に株式会社を設立しました。それがHackCampです。

これまで関は多数のハッカソン・アイデアソンに携わってきました。そのなかでも特に印象深いのが被災地のボランティアセンターでのハッカソンだったと言います。

「ボランティア受付システムや写真のデジタル修復サービスなど、少々古い技術でも十分実現できるアイデアばかりなのに、被災者の方々からすごく感謝されました。それで課題解決には必ずしも最先端の技術は必要ないのだと実感したんです。課題を抱える当事者の話をエンジニアが直接聞き、そのニーズに基づいてシステムやサービスを開発することに意味があるのだと」(関)

だからと言って、エンジニアと課題の当事者を同じテーブルに座らせるだけではうまくはいきません。両者はITに関する知識も課題に対する認識も異なるため、議論がかみ合わないのです。そんな関の課題に応えたのがHackCamp創業メンバーであり取締役副社長である矢吹博和でした。

「矢吹さんは引き出しが多い。参加者全員の意見をうまく引き出し、発言と人格と立場を切り分け、純粋にアイデアだけを掛け合わせて昇華させるので、参加者の満足度が非常に高いのです。ぼくは言いっぱなしの方ですが、矢吹さんは仕組み作りと、その仕組みを運用するのがうまい。大いに助けられています」(関)

アイデア発想からプロダクトまで独自ノウハウを確立

関治之

HackCamp設立から2年。ハッカソンは一躍市民権を得ましたが、単なるブームで終わるのか、この先もずっと使われ続けるものなのか、答えはまだ分かりません。しかし、当初は想像できなかったくらい、数多くの企業がハッカソンを導入し、あるいは今後導入したいと考えているのは事実です。

一般化したことによる弊害も生じています。ハッカソンに対する期待値が高すぎて、現実とのギャップが生じるケースが増えているのです。ハッカソンはコミュニティ形成や可能性の可視化、プロトタイプ制作などは出来ますが、そこで生まれたアイデアを事業化することはできません。事業化には別のリソースが必要なのです。

関治之

HackCampではハッカソンへの期待値と成果にギャップが生じないように、事前に綿密な打ち合わせを行うとともに、豊富なノウハウを生かして良質なプログラムを開発、提供しています。また、ハッカソンへの参加規約を一般公開するなど、業界全体の質を高める活動にも力を入れています。

「ハッカソンの普及はHackCamp設立前から思っていたことでした。現状に対して当社も少なからず貢献していると自負しています。だからこそ、業界全体が良くなっていってほしいと願っています」(関)

HackCampは既にハッカソンの“次”を見据えています。昨年11月、新規事業の開発現場をコーチングするギルドワークスさんとの協同プロジェクトとして発表した、企業の新規事業開発を支援する新サービス「発火ワークス」は、まさに“次”を具現化するものです。「ハッカソンで良いプロトタイプが生まれない」「ハッカソンの翌日から何も進まない」といった課題を解決するための仕掛けがさまざま盛り込まれています。

課題解決のプロセスを楽しみ、より良い社会を作るドライブフォース

関治之

ハックhackとは「(斧で乱暴に)たたききる」という意味の英単語ですが、「うまくやり抜く」「出来ることをやる」といったニュアンスも含み、IT業界では「その場にあるもので何とかする」という意味で用いられています。HackCampが描く世界観はまさにそのイメージ。エンジニアがキャンプを楽しむようにものづくりを楽しみ、課題の当事者と対話する場を増やしていきたいと考えています。

コンセプトは「○○をハックする」。

あなたなら「○○」にどのような言葉を当てはめますか?

プロフィール

関治之(せき・はるゆき)

株式会社HackCamp 代表取締役社長 関治之(せき・はるゆき)

東京都豊島区出身。大手SIerなどを経て、株式会社シリウステクノロジーズに入社。2009年にGPS情報を扱う合同会社Georepublic Japan社を設立。2013年には地域課題解決のための活動を支援する一般社団法人コード・フォー・ジャパン社を設立。その一方で、2009年ころから自主開催してきたハッカソンでも注目を集め、2012年にはNASA主催のハッカソンの日本版オーガナイザーに就任。2014年、ハッカソンをはじめとするオープンイノベーションのためのイベントを手掛ける株式会社HackCamp社を設立。現在に至る。

お問い合わせ

相談してみたいと思った方、遠慮なくご連絡ください

HackCampに相談してみる