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「人間の価値」を再認識〜生成型AIと人間の共創でスケールする事業アイデアを創発
ドコモグループ(docomo STARTUP事務局) 様

ドコモグループが2023年度から実施している新規事業創出支援プログラム「docomo STARTUP(通称:ドコスタ)」。ドコスタ事務局では、新たなアイデアを出すハードルを下げ、より多くの社員に参加してもらおうと2024年度の参加者募集に先駆け、AI活用演習を組み込んだHackCampの「アイデア創発研修」(フル・オンライン)を実施しました。「研修参加者の3割が、実際に新規事業創出コンテストに応募しています」と、手ごたえを感じたというこの研修のメリットや参加者の行動変容などについて、事務局の斉藤久美子さん(写真右)、龍弘大さんにお話をうかがいました。

(HackCamp→H、斉藤さん・龍さんは敬称略)

ボトムアップで社員のアイデアを事業化する〜docomo STARTUPの概要

H:NTTドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアが2022年1月に経営統合して2年半近くが経ちました。各社それぞれで進めていた社内スタートアップ支援も「docomo STARTUP」に再編されたそうですが、そもそもなぜ、ドコモグループのような大きな組織に、こうした社内新規事業支援制度が必要なのか、背景を教えていただけますか?

斉藤:そうですね。NTTグループはかなり大きい組織ですが、今、世界をみるとさまざまな魅力的なプレーヤーがすごいスピードでたくさん出てきています。

だから「新しいことを始めないと、自分たちの未来はないんじゃないか」という危機感があるんですね。

私たちが未来に向けて新しいチャレンジに取り組むことで、世の中や未来が良い方向に変わるという思いをもって、新規事業創出・スタートアップ支援に携わっています。

新しい価値を創造し、世の中に提供して、ゆくゆくは新しい収益の柱になっていく仕組みが必要だということは、経営層も社員も認識しています。この仕組み(docomo STARTUP)はボトムアップで社員の個人のアイデアを事業化する取り組みですが、事業化の判断などには経営層も関わっており、トップダウンとボトムアップを掛け合わせた制度であると認識しています。

龍:docomo STARTUPはドコモグループ行動原則である「問い続けよう。踏み出そう。かけ合わせよう。」に基づいて展開されています。

斉藤:もちろん既存事業の枠組みでも新規事業を開発していますが、私たちdocomo STARTUPが担っているのはドコモグループとして新しい領域へのチャレンジです。しかも「会社・組織横断でチャレンジする」という点が、既存事業部での新規事業開発とは違います。

また、参加者も若手からベテランまで広い世代が応募されているのも特徴ですね。自分の本業務とは直接関係がない領域であっても、docomo STARTUPにチャレンジすることで「やりたいことが実現できるかもしれない」というモチベーションを持つ方もいます。さらに組織を超えてチーミングできるので、社内の様々な属性・年代が参加している点も魅力的な点だと思います。

〈出典〉docomo STARTUP https://startup.docomo.ne.jp/

チャレンジャーを増やしたい〜アイデア創発研修を実施した背景

H:次に、HackCampがお手伝いした「アイデア創発研修」についてうかがいます。23年度を振り返って、事務局として「アイデア創発手法を改めて次年度の参加者募集の前に研修した方がよい」と判断された背景には、どのような課題感があったのでしょうか?

斉藤:docomo STARTUPは、「COLLEGE(学ぶ)」「CHALLENGE(挑む)」「GROWTH(育てる)」の3ステップで構成されています。私達としては質のいいアイデアをできるだけたくさん集めたいので、不定期に講演会などを企画して起業マインドを高める機会を提供していました。

ただし、チャレンジャーを増やし、起業マインドを持った社員のすそ野を広げていくために「何かやってみたい気持ちはあるのに、事業アイデアを構想したことがない人の背中を押すにはどうしたらよいだろう?」と考えた際、エントリー前にアイデアの作り方を学ぶワークショップが有効なのではないかと考えたのです。

業務に忙殺されていると、新しいアイデアを検討する時間が取れないということがありますが、こうした新規事業創出コンテストに一度でもエントリーすると、アイデアを考える癖がつくように思います。

アイデアを考えることが習慣化されると、日常的に「こうしたら良くなるかな」と改善策を考えたり「これは不便じゃないかな」などと課題を考えたりするので、アイデアが生まれやすくなります。そうしたことをワークショップで体験することで、まだdocomo STARTUPに参加したことがない人に「アイデアを考えるきっかけ」と「挑戦のスイッチを入れたい」という目的がありました。

AIと人間が担うポイントの差異を考えさせる構成〜HackCampを選んだ理由

H:「学び」のフェイズでアイデア創出ワークショップの必要性を感じているなかで、HackCampのプログラムを選んでくださったポイント・きっかけについておうかがいします。

龍:アイデアを考える際、目の前の課題から「どうしよう?」と考える人も多いと思います。ただ、以前HackCampさんのメソッドに触れた際に「バックキャスティング」でアイデアを考えるというやり方もとても面白いと思ったんですね。「まずは理想を明確に描こう」という視点でワークが組み立てられていて、それがとても刺激的でした。

今回も私たちが想定していない「何かワクワクすることをやってくれるのではないか?」という期待からお声がけさせていただき、蓋を開けると、AIを新規事業開発のアイデア作りに組み込んだプログラムだったので「これは!」と思いました。

H:生成型AIを使ったアイデア創発プログラムという点がユニークだったということですね。具体的にどのような点を評価したのか、もう少し説明していただけますか?

斉藤:2022年からChatGPTがすごいスピードで浸透してきました。深く使ってる人と使ってない人の差が開いていることは感じていましたし、生成型AIを活用して生産性を高め、業務効率化を追求してる方が多かったです。

このdocomo STARTUPも「稼働の2割の時間を使っていいですよ」と参加者に伝えていますが、その限られた時間の中で新規事業を創出する際に生成型AIを使わない手はないと考えています。

今、使えるようにならなければ来年度以降、使う人と使わない人の差がもっと開いてしまいます。ですから、ChatGPTを使った研修はタイムリーでした。

また、今回のHackCampのプログラムは「新規事業創出に特化したAIの活用」が考えられていました。事業開発のプロセスに沿ってレクチャーとAIを使った演習が設計されているプログラムは他では見たことがなく、参加者にとってもアイデア創発手法の会得だけでは得られない学びがあるので「これはありがたい」と、飛びついてしまいました(笑)。

さらに「ここはAIに任せ、こちらは人間が考えた方がいい」というAIと人間が担うポイントについて、考えさせる構成もよかったですね。他の生成型AIのワークショップや講座は、一般的な業務効率化を前提としたChatGPTの使い方や事例・プロンプト紹介などが多く、それらの講座などと比べると(HackCampのプログラムは)非常に質が高く、参加者が得られる学びは大きいと思いました。

新規事業開発時の「課題設定の難しさ」を乗り越える視点

H:本研修後の参加者アンケートで、受講生のみなさんがほぼ全員が「非常に満足」「満足」と答えてくださってホッとしました。特に①「業界課題」にフォーカスした新規事業開発セミナー②懸念点打破のステップを盛り込んだアイデアブラッシュアップ手法「PPCO」ーこの2点を高く評価する参加者が多かったことが印象的でした。事務局の立場から、この結果についてどのように分析されますか?

斉藤:Day1のインプット部分である新規事業開発セミナーに関しては、「業界の課題を解決する」というdocomo STARTUP参加者が抱えている「課題設定の難しさ」を乗り越える視点を提供してくれたと思います。

私たちは基本、リーンスタートアップのフレームワークを使って参加者にビジネスプランを作ってもらっていますが、この手法もすでに十数年経っているので決して万能でも新しくもないです。

ただ、多くの初心者と一緒に新規事業創出をゼロから検討する上で、おさえておくべきポイントと指標が必要なので、フレームワークとして使っていますが、リーンスタートアップの発想からは大きな事業アイデアに育つまで時間がかかったり、市場拡大が難しかったりする面があります。

また「どの課題に着目するのか?」という課題設定の難しさもあります。

「個人の原体験から」「ソリューションから」「社会課題から」を起点とし、トレンドやテクノロジーを掛け合わせたアイデア発想をしてきましたが、様々な壁にぶち当たっていました。

こうしたいくつかの課題設定の壁を越えるにあたって、今回の「業界の課題を解決する」という視点は、私たちにとっても非常に参考になりましたし、そこが参加者に刺さったのは良かったですね。


H:「PP(Plus/Potential=メリットや潜在可能性の列挙)・C(Concern=懸念点の列挙)・O(Overcome=懸念点の打破)」という、グループ対話の中でアイデアをブラッシュアップする手法が参加者の印象に残ったようですが、この点についてどのように分析されますか?特に「懸念点を列挙する」プロセスと「打破する」プロセスについて肯定的な評価をする方が多かったですね。

斉藤:コンテスト参加者は真面目で、「正解」をすぐに探そうとする傾向が強いように思います。そのため「これはダメだ」というフィードバックを受けるとそこでもう諦めてしまうことも多いですね。通常の既存業務であればすぐ切り替えて次の策を考えてもよいのですが、docomo STARTUPは答えがない・不確実な領域に挑戦する事業です。

新規事業創出の場合、答えをつくっていく姿勢が求められます。社外インタビューやメンタリング時に、事業アイデアについて否定的なフィードバックをされると自分が否定される感覚に陥って「自信がなくなった」と、止まってしまうことがあるのですね。

「だったらこうしよう」と回り込んで、否定的な意見を乗り越えてほしいのですが…。

その点、懸念や打開案を出すプロセスが予め決まっていたり、生成型AIを活用できたりするというのは、フィードバックを受けるハードルを下げたかもしれません。「こういう懸念点があるけれど、それにはこんな解決策があるんだ」という形がわかると、もう一度調べてみようとか、ここを改善してみようという行動に結びつきそうです。

龍:生成型AIが懸念点を挙げても怖くないですからね。何度問いかけても答えてくれますから。

斉藤:フィードバックしあいながらチャレンジする体験が特に必要かもしれません。docomo STARTUPの短い期間内にそうした機会を入れ込むのは結構難しいのですが、それでも応募してくださった人に対してできるだけフォローしたいと思っています。

その意味で、ワークショップで集中的に(PPCOなどの)アイデアブラッシュアップができるのはいいですね。

価値ある参加者コミュニティーの醸成へ〜今後のdocomo STARTUPについて

斉藤:今回のアイデア創発研修に参加した方の約3割が、新規事業創出コンテストにも申し込んでくれました。今回の研修参加者同士でグループを組み、アイデアを出そうという話も研修後のオンライン交流会で盛り上がりました。交流会でグループを超えて各自のアイデアを紹介しあう場面もあるなど、交流や対話の時間を楽しんでいる様子をみて、私たち事務局もコンテスト参加者コミュニティの必要性を感じています。

龍:コミュニティ作りは非常に重要ですね。組織や世代を超え「新たな事業を作り出そう」とする同じ志を持つ人たちがつながって、情報交換や刺激し合える環境は貴重です。そういった価値あるコミュニティ作りも何かサポートしていただけると非常にありがたいなと思っています。

H:今後も参加者がワクワクし、組織を越えてつながれる場づくりでご協力できたらと思っています。本日はありがとうございました。

目的

  • 新規事業開発を目指す社員が、AIを活用したアイデア創発手法を学びに新規事業創出コンテストに応募する。

課題

  • 新規事業開発にチャレンジしたくても、アイデアの出し方がわからず、新規事業創出コンテストに応募できない社員がいた。また、ビジネスとしてスケールする事業アイデアの種が見つからず、伸び悩むことが多かった。

効果

  • 研修参加者の3割が新規事業創出コンテストに応募することになった。
  • 懸念点があっても乗り越える手法を知ったことで参加者のマインドが変わるきっかけになった。
  • 1人でもアイデアが出せる手法を学べた。

導入の決め手

  • 単なる業務効率化ではない、プロンプトに依存しないAIの活用法がハンズオンで学べたこと。
  • スケールする事業を考えるポイントをつかむレクチャーがあったこと。
  • チームメンバーと対話を重ねて懸念点を打破するブラッシュアップ手法が具体的に学べたこと。

時期

2024年3月(プロジェクト期間:約2ヶ月)

参加人数

約30人

参考URL

関連リンク

▼docomo STARTUP

https://startup.docomo.ne.jp/

▼ドコモグループ行動原則

問い続けよう。踏み出そう。かけ合わせよう。

https://www.docomo.ne.jp/corporate/philosophy_vision/docomo_principles/

▼ライブ公開講座  AIと人との共創で「スケールする新規事業を作る」アイデアワークショップ

https://ivan-school.share-wis.com/ja/courses/new-business/

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