アジアハックで誕生した「STANDY」という最強チーム

2018年9月1日、日本で2回目の開催となる「Asia Open Data Hackathon」が実施され、全国から選出された日本代表5チームが台湾・韓国のチームとハッカソンの成果を競いました。

2年連続開催すると定点観測ができるので、どのようなデータを提供すればエンジニア側でいじりやすいのか、有用なのかが見えてくるので、オープンデータの利活用という面でも非常にユニークな取り組みなのですが、この大会の日本側出場者で異彩を放ち、2年連続優勝、海外のチームや審査員たちも「なんだこのチームは」と話題にしているチームがいます。

2018年開催のレポートと合わせて、その話題のチーム「STANDY」の紹介をしたいと思います。

Asia Open Data Hackathonとは

アジアオープンデータハッカソンは、アジア共通の課題をオープンデータを用いて相互に解決することを目的に、台湾とタイの2カ国の間で2015年に初開催され、今年3回目を迎えるクロスカントリーハッカソンイベントです。
2017年5月11日にODA(台湾)と、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(略称、以下VLED(日本))の間でオープンデータの相互の利活用等を定めたMOU(覚書)が締結されたことを受け日本への上陸が決まりました。

日本ではあまり知られておりませんが、実は台湾はオープンデータの先進国。世界の政府を対象にしたオープンデータ進捗状況調査で、2015年と2016年に2年連続1位を獲得しています。

その台湾が旗振り役となり、日本は昨年2017年に初開催。優勝チームは賞金に加えて、権威あるオープンデータのサミットにて表彰され、展示と他国とのマッチングの機会が与えられます。

今年は「観光」「市民の安全」の2つのテーマをエンジニアリングで課題解決するべく、各国の優秀なハッカー達合計150名が出場しました。

公式WEBサイトはこちら

アジアの共通課題を解決する

「観光」「市民の安全」をテーマとしておりますが、各国特定の課題はあります。本年は参加者に対し、動画の形式で課題インプットが行われました。

日本サイドでは、「観光」について、日本国内最大の観光情報プラットフォームであるLIVE JAPAN事務局さんに取材させていただきました。また「市民の安全」については、防災士で気象データのスペシャリストであるYumakeの佐藤さんに取材させていただきました。内容は公式WEBサイトのこちらからご覧いただけます。

動画はWEBサイトからご覧いただけます

LIVE JAPAN様には今回、内閣官房様と並んで国際ハッカソンの決勝戦で審査員としても参画いただきました。

今回独自に提供されたデータ

この大会自体は今年で5年目ですが、オープンデータの利活用を国際間でやろうと思った時に、データのクオリティの違いと言語の違いは強烈な障害でした。

日本は昨年から参加したわけですが、1年前に実施した時も、そもそもデータがドメスティックな言語で書かれており、見つけることが出来ないという、利活用以前の問題が発生していました。各国のデータのクオリティの違いについてさらに言及すると、そもそも各国の各地方自治体の提供しているデータの項目がバラバラなので、言語の壁をクリアして利用しようと思っても使いたいと思っている地域のものが使えない、などのさらなる障害がありました。

そこで、今年は「推奨データセット」という内閣官房よりフォーマット標準例が示されたデータを活用することにしました。準拠する地方自治体が徐々に増えてきているので、少なくとも日本国内においては、ハッカソンで作ったサービスが横展開が期待できるデータです。さらにそのデータを台湾・韓国のオーガナイザーに共有し、類似データを抽出してもらい、メインフィールドを全て英語で統一的な言葉に修正して一覧化しました。

データセットのサンプルはこちら公式Webサイトより)からご確認いただけます。

提供サンプルデータ

オープンデータのハッカソンは「面白くない」とよく言われますが、それはweb上でとりあえず公開しているものをなんとかしていじってもらう、というエンジニアリングとはちょっと違う、クレンジングの部分の作業ばかりになってしまうからだと考えており、今後実施されるオープンデータのハッカソンでは、このようなイーコライズの作業を運営側がどんどん実施していくべきだと感じました。さらに、日本予選会場には、台湾語と韓国語の翻訳者をサポートに入ってもらいました。

また、技術面においては今回三か国の統一スポンサーとしてHERE Technologiesさんが地図APIを提供して下さりました。独自の賞「HERE International Award」も設けられており、受賞者は1,000USDの賞金と、韓国でのサミットの渡航・宿泊権が贈呈されます。

HERE Technologiesのメンターと翻訳メンター

ハッカソン日本予選

日本予選では、東京と千葉に2会場とオンライン受付をしました。現地の様子はこのような感じです。

両会場で約50名の方が参加され、2日間集中的に開発されました。本選出場チーム以外のアウトプットをご紹介すると、日本/韓国/台湾の大気汚染(PM1.0)の未来傾向をAIで解析しスマートスピーカーがアウトプットしてくれるサービスや、韓国/台湾/日本の公衆トイレのオープンデータを基にトイレ情報を現在地に近い順に表示し、設備の詳細や道のりを教えてくれるサービス、スマホをかざすだけでARで観光地の説明を表示してくれるアプリや、外国人旅行者とその旅にバーチャルで参加したい日本人をマッチングして、バーチャル旅のお供が出来るサービス等が発表されました。

東京会場のプレゼン

いずれのチームも、とてもクリエイティブで、かつ3か国のデータをユニークに活用された素晴らしい作品ばかりでした。

もうひとつ、イベント的にチャレンジングだったのが、千葉会場では今回、ダイバーシティの観点から託児機能を備え、お子様のいる参加希望者への門戸を開きました。
お子さんを連れて参加されたエンジニアご夫婦や、1歳児を連れてはじめてハッカソンに参加されたグラフィックデザイナーママさん、都内会場より自宅に近かったというハッカソン常連エンジニアさんなど(さらにその繋がりで岐阜県から遠隔参加されたメンバーも)が集まりました。

ハッカソンに託児施設が

ハッカソンは通常、土日休日に開催されるので「土日丸々2日間という日程上、身内でも子守りを頼むのが難しかった」という方も多く、今回の取り組みでは、新しい層にハッカソンへの参加の楽しさを伝えられたとともに、オープンデータを使った社会課題解決において新たな視点を持ち込むことが出来たと思います。

国際ハッカソン決勝

決勝は台湾・韓国・日本の参加国をオンラインで繋ぎ、各国の代表5チームが2チームずつ順番にプレゼンします。制限時間は5分、発表も進行も全て英語です。

国際中継の模様

日本から出場したのは以下のチーム

Higashinokuzu チーム / 「U meets Tourist」

観光地のデータ、AEDの設置場所などのオープンデータと、現地のボランティアガイドのデータベースを結びつけることにより、自分だけの旅行を作る体験型ツーリズムの手助けをしてくれるサービス。スマホをシェイクすると、旅先での病気や災害にも対応できるエマージェンシーモード切り替わる。

KakiP チーム /  「SASURAI」

なんとなく行きたい場所があるがイメージしかない方に、知らない土地でも、観光地の画像を直感で「行きたい」「行きたくない」を選んでいくと、行きたい場所の旅行プラン(経路や電車の時間など)を提案してくれるサービス。
観光にはつきもののトイレ問題や、海外では特に多いWi-Fi問題なども場所をプロットすることで、快適な観光地めぐりをサポートする。さすらいとさすらうプロジェクトURL

emo map チーム / 「emo map」

Tweetから感情を分析しそれらの感情をマッピングすることで、今の季節はどこに行けば楽しめるのかを外国からの旅行者が閲覧できるサービス。感情×位置情報×季節で、観光客にとって価値ある情報を発信する。プロジェクトURL

Oh, Now! チーム / 「Oh, Now!」

準優勝「BEST HACKER」受賞!

3か国のハッカーが選ぶ「TEAM’S CHOICE」受賞!

韓国、台湾、日本の避難所オープンデータ・水利データを活用。今まさに目の前で起こっているヤバイ状況をシェアし、リアルタイムでマップ上に表示。アプリ使用者は、被害を事前に回避できる。また、消防隊が活用することで、災害対応がスムーズに行える。画像とマップで危機を知らせるため、外国人観光客にもわかりやすい。スライドデータ

2年連続優勝チーム「STANDY」

そして最後にご紹介するのが、この記事のタイトルにもさせていただいたチーム「STANDY」です。Rohit Kumar Singhさん、Yanagisawa Satoshiさん、Okada Koichiさん、Tang Li Qunさん(昨年はデザイナーのAsai Yugoさんも参加)の4人で構成されるこのチームは、昨年2017年のAsia Open Data Hackathonで彗星のごとく現れ、最優秀賞であるINVINCIBLE HACKERを受賞されました。

2017年最優秀賞受賞

ハッカソン界隈で見かけない方々だったのでお聞きしたところ、ハッカソン自体初出場だったということや、チームメンバーと知り合ったのが英語のコミュニティだったこともあり、グローバルハッカソンだったからこそ出現したチームとも言えます。

2017年の作品は、ディープラーニングによって気象データだけでなく、想定ユーザーである子供1人1人の感情を独自のINDEXを用いて予測し、遊ぶ場所の提案やお友達作りのきっかけを提供するアプリ。全く予想のつかない角度のアイデアと、圧倒的な技術力で、最高にユニークな気象データの活用方法を示しました。

ユニークなロジックが面白い

その後、台湾で実施された、世界20ヵ国以上が参加するオープンデータサミットで登壇と展示を行い、他国の関係者からもかなりの注目を集めていました。

2017年のサミットの様子

STANDYが今年挑んだテーマは「観光」と「市民安全(防災)」のハイブリッド。プロダクトタイトルは『Sentiments in AR』。

プロダクト概要

観光で見知らぬ土地に赴いたとき、あるいは、災害に会った時、スマートフォンで得られる情報だけでは不十分な時があります。『Sentiments in AR』は、誰かがtweetした内容から、その感情を可視化して空に映し出します。その感情の変化から災害を即座に検知し最寄りの避難所を示します。空に映し出された情報は、風景に結びつけられ利用者の無意識に語りかけるものとして、私たちに新たな体験を与えてくれます。画面内の空の位置の特定にはケンブリッジ大学における自動運転技術の研究を応用、ARへの応用としては先進的な試みにチャレンジしました。こちらでDemoをご覧いただけます。

DEMOの一部より抜粋

空をキャンパスとして利用するという発想と描き方は、データの新たなビジュアライゼーション手法として各国から賞賛の嵐でした。聞くところによると、1年前にサミットに出場した時点からこのようなデータビジュアライゼーションについてチームで議論を重ねてこられたとのこと。今後、Asia Open Data Hackathonだけでなく、様々な場面で彼らの活躍を目に出来るのではと思い、とても期待に胸が高鳴ります。ちなみに、今回、最優秀賞だけでなく、スポンサーとしてAPI提供いただいたHERE TechnologiesさんのHERE INTERNATIONAL AWARDも受賞されました。

最優秀賞「INVINCIBLE HACKER」受賞

スポンサー賞「HERE INTERNATIONAL AWARD」受賞

HERE Technologies, Director of Regional Map and Content, North AsiaのMichael Cheongさん、Manager of Data Acquisition & Community, North AsiaのSabrina ChiangさんとSTANDY 

最優秀賞・優秀賞を獲得したチーム「STANDY」と、「Oh,Now!」は、2018年11月5日から11月8日まで韓国・ソウル市で開催されるオープンデータサミット『2018 AODP Dialogue & Open Data Conference』に登壇・展示を行っていただきます。台湾・韓国以外の各国の要人に彼らのプロダクトがどのように映るのか、反応がとても楽しみです!

アジアハック、なぜやるか

今年2年目の開催でしたが、相変わらず国際間のやりとりというのはやはり、言葉の壁、データの質の壁、データの形式の壁など様々な壁がありました。しかし、シリーズで開催していくことで初めて見えてくる改善点も出てきています。例えば、オープンデータの利活用の前に、どのようなデータを収集し、どのように公開するかという、公開する側が改善すべきポイントも、このように国際的な利用方法がアウトプットされていると検討し易くなります。ハッカソンの運営としても国際的な取り組みの場合、今後は発表形式ではなくトーナメント形式の方がナレッジ共有しやすいのではないかなど、様々な改善点が見えてきました。

今回の参加者の皆様のような、国際間の様々な壁に無理やり穴を開けるような工夫と、クリエイティビティ、エネルギーが、アジアの課題を「ハック」し、多くの人を巻き込む形で社会をより良くしていくと思います。

Asia Open Data Hackathon 2018に出場されたチームの皆さん、ご協力いただいたLIVE JAPANさん、内閣官房さん、Yumakeさん、ありがとうございました!

この記事で興味を持っていただいた方は、是非次の機会にご参加下さい!

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