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宮崎と東京をICTでひとつにつなぐハッカソン
NTTデータ 様

東京と宮崎をICTでひとつにつなぐ

このハッカソンのWHY!?(なぜ)

 → 都会と地方の空間共有を実現したい

このハッカソンのRESULT!?(どうなった!?)

 → 都会発のテクノロジーで地方都市が笑顔に、農家民泊体験を通して都会の人々が元気に!

全国各地に広がりを見せる地方創生の動き。システムインテグレータとして日本中にITサービスを提供しているNTTデータだからこそ出来る東京と地方をつなぐ取り組みとは――。

このハッカソンのWHY!?(なぜ)

 → 都会と地方の空間共有を実現したい

NTTデータの吉田さん(写真左)と神田さん(写真右)

宮崎県中西部の西諸(にしもろ)圏域は小林市・えびの市・高原町の3自治体からなり、農業や畜産業が盛んな地域。多くの地方都市と同様に少子高齢化や交流人口の伸び悩みといった課題を抱えています。そんな宮崎にしもろと、ICTを活用した地方活性化の推進を目指すNTTデータがタッグを組み、新規ビジネス・サービスの開発に挑戦することになりました。

同社イノベーション推進部の吉田さんは地方活性化に造詣が深く、観光庁「Visit Japan Plus」や経済産業省「おもてなしタスクフォース」のメンバーとしても活躍してこられました。

「観光で地方を活性化するには4つのプロセスがあります。まずは情報発信で魅力を知ってもらうこと。次はWebコミュニケーションなどを通して理解を深めてもらう。そして実際に体験して感動してもらう。その感動が口コミで広まると、別の人が魅力を知ることになる。このサイクルを回していくことが重要です」(吉田さん)

「観光で地方を活性化するには4つのプロセスがある」と話す吉田さん

2014年に小林市が制作した移住促進PRビデオは、にしもろの方言とフランス語が似ていることをユーモラスに描き、話題を集めました。情報発信としては大成功です。地方活性化のサイクルを回すには次の一手が必要。そこで注目したのがアイデアソン・ハッカソンでした。一連のプロジェクトの企画や運営を担当したNTTデータ広報部の神田さんは「課題解決型のフィールドを用意することにこだわった」と言います。

「多くのアイデアソン・ハッカソンは数日間のイベントで終わりですが、当社としては新しいビジネスやサービス開発につなげたい。アイデア創出からプロトタイプ作成、そうやって生まれたアイデアの有用性の効果検証まで行うことで、一気通貫の流れを作ろうと考えました」(神田さん)

「ハッカソンを単発のイベントで終わらせず、新しいビジネスやサービス開発につなげたい」と神田さん

初めに実施したのは2015年10月の「地方創生アイデアソン」。エンジニアやプログラマだけでなく、故郷をなんとかしたいというアツい思いの宮崎県出身者も加わり、合計79名が集結。そこで生まれた111個のアイデアから「民泊」「豊かな自然」「温かい人」というキーワードを抽出し、10月30日にサービスプロトタイピングを開催しました。最終的には「修学旅行生が民泊を取材して感動体験を発信」「水田で泥んこバレーボール大会を開催、東京丸の内にも中継」など、11個のアイデアが誕生しました。

そしていよいよハッカソンです。ここまでは自社企画で進めてきましたが、神田さんはハッカソンには社外パートナーが必要だと考え、周囲にヒアリングしたところ、HackCampの矢吹の名前が挙がりました。

「実績十分で安心してお任せできると思いましたし、矢吹さんの『ハッカソンを実施して終わりではもったいない』との考えは私たちの方針にもぴったりと合いました。一緒に作り上げようという姿勢も有難かったですね」(吉田さん)

「矢吹さんとの打ち合わせのなかで、実際に農家民泊を行うというアイデアが生まれました。もともと効果検証のプロセスは必要だと思っていましたが、現地で実証実験を行うことはまったく考えていなかったんです。さすがだなと思いました」(神田さん)

このハッカソンのHOW(どうやって)

 → 現地での実証実験を前提に農家民泊をハックする!

NTTデータのセミナールームでプレゼンする吉田さん

3月12日、東京都豊洲のNTTデータのセミナールームにおいて、「宮崎と東京をつなぐハッカソン」が開催されました。参加者はトータル50名で、自発的にプライベートの活動として参加したNTTデータ社員もいました。また、会場にはWEBコミュニケーションツール「V-cube」や遠隔コミュニケーションを想定したガジェット「Sota」などのツールが用意され、提供各社のエンジニアがメンターとして参加しています。

今回のテーマは「農家民宿をハックする」。最初のアイデアソンではにしもろ地方の活性化という広い視点で議論し、プロトタイピングでは民泊・豊かな自然・温かい人をキーワードでブラッシュアップを図りましたが、ハッカソンではより踏み込んだテーマが設定されたのです。

「にしもろでは既に農家民泊を実施していますが、メインは修学旅行生です。プライバシー保護の観点から、彼らの感動体験の様子をネットで公開することが出来ず、情報発信には限界がありました。そこで今回のハッカソンではターゲットやコンテンツを柔軟に捉えて、もっと行きたくなる、もっと発信したくなるアイデアやアプリを考えてもらうことにしました」(吉田さん)

選抜者には2週間後に現地で開催される農家民泊に参加し、実証実験を行えるとあって、参加者の表情は真剣そのもの。最初は意見がまとまらなかったチームも、ユニークなガジェットや技術活用のヒントを与えてくれるメンターの助けもあって、徐々にアイデアが形になっていきます。ハッカソン2日目の中間発表に向けて、参加者の思考は宮崎にしもろ一色になっていきました。

本イベントの写真ギャラリー

実際に行われたときに撮影したハッカソンの様子です、ぜひご覧ください。

20160311-12_NTTデータハッカソン〜東京と宮崎をつなぐハッカソン〜
フォトギャラリーへ遷移します

このハッカソンのRESULT(結果)

 → 宮崎の当たり前が都会では新鮮、空間を飛び越えて感動を共有する

興味津々にハッカソンを見守る小林市の肥後正弘市長

東京都豊洲で開催されたハッカソンの2日目。中間発表は東京と宮崎をネット回線で結んで行われました。小林市の肥後正弘市長と、えびの市の村岡隆明市長は東京で、高原町の日高光浩町長は宮崎で、参加者のプレゼンテーションを見守ります。宮崎会場には農家の方々の姿もあり、現地の方々が期待を寄せてくれていることが伝わってきます。

えびの市の村岡隆明市長

発表されたアイデアはいずれも農家民泊を基軸にしつつ、ICTの活用提案がしっかりと盛り込まれていました。たとえば、チームどろどろ「DORONKO FESTIVAL」は文字通り、泥遊びをテーマにしたアイデアですが、心拍数などを測定できるウェアラブルセンサー「hitoe」や、仮想体験を実現できるメガネ型ウェアラブル端末「Vusix M100」などを使うことで、東京にいる人々も泥遊びの楽しさや感動を味わえるというものです。

「インターネットはパケット技術のおかげで格段に使い勝手がよくなったわけですが、これからの情報通信は気持ちや感動もパケットにして届けられるのではないかと思います。泥遊びの興奮や感動、ワクワクドキドキを、いかにして遠く離れた人たちと分かち合うのか。当社が目指しているのは、ICTを使った空間共有なのです」(吉田さん)

審査の結果、選抜された10人は3月23日24日の農家民泊の権利を手にしました。惜しくも選に漏れた人のなかから「どうしても現地に行きたい」と自費参加を申し出た人もいたそうです。ハッカソンで終わりではなく、実際に現地で試してみたいという気持ちは参加者にも共通していたのでした。

農家民泊をテーマにしたアイデアがたくさん

このハッカソンのNEXT STEP(次のステップ)

 → ICTによる地方活性化を横展開、チャレンジはまだまだ終わらない

農家民泊ツアーが始まる、農作業を行なう参加者の心拍数をコンピュータで可視化するシーン

3月23日、農家民泊ツアーが始まりました。水と緑に恵まれた美しい風景、五感でわかる農業・畜産業の苦労や喜び、そこで交わされる農家の方々との会話。現地に行ったからこその知見を生かし、それぞれがハッカソンで開発したアプリやアイデアを検証していきます。夜は、にしもろ産食材をふんだんに使った料理とお酒で懇親会。最初は人見知りをしていたメンバーも徐々に打ち解けて、大いに交流を楽しみました。

ミニトマトの育成環境を解説しながらインターネット対面販売の実証実験も行われた

翌日は最終プレゼンテーションです。ハッカソンの中間発表は東京で開催し、宮崎に中継していましたが、この日は宮崎で開催し、その模様をネット回線で東京に届けました。さらに、プレゼンテーションの後は両会場をネット回線でつないだまま、料理教室を開催。宮崎にいる農家の女性陣が郷土料理の作り方を発信し、東京の人々がその手順に沿って調理することで、遠く離れた2つの拠点は楽しくて美味しいひとときを共有することができました。

東京と中継して宮崎の女性陣が郷土料理の作り方をインターネット越しで伝授する
こちらは東京側、吉田さんたちが指導を受けながら宮崎の郷土料理に挑戦

「農家民泊ツアーは無事終了しましたが、これで終わりではありません。ここで集まったメンバーがアイデアを実現しようと活動していますから、にしもろの活性化につながることを期待しています。また、今回の取組みを知った他の自治体から『ぜひ一緒にやりたい』とのオファーが来ています。当社としてはこの貴重なノウハウを横展開していきたいと思っています」(吉田さん)

いまは東京と地方都市をICTで結ぶ取り組みがメインですが、将来的には地方と地方の連携も十分考えられます。それぞれの地方の名産を掛け合わせて開発した新商品が、ふるさと納税の促進につながるかもしれません。

また、良い意味で想定外だったのは社員の積極的な参加でした。

「一連のプロジェクトへの自主参加は延べ50人以上。思ったよりもアツい社員が大勢いることが分かりました。意欲ある若手が挑戦できる環境は社内活性化としても大切なことです。彼らの情熱の火を絶やさないためにも、こうした取り組みを継続していきたいと思っています」(神田さん)

ありがとうございました。

東京の参加者はきっと地方への魅力や関心を高めてくれたに違いない

HackCamp 矢吹から、インタビューを終えて

当社では事前の打ち合わせを重視していますが、今回は吉田さんの地方創生にかける情熱と、神田さんの新技術にかける思いが重なって、いつも以上に濃密なミーティングでした。お二人の希望を叶えるには大勢を巻き込むことが重要ですから、選抜者を農家民泊にご招待するプランをご提案。参加者のモチベーション向上に努めました。これを機に泥んこフェスティバルの実行に向けたプロジェクトが始まっています。少しでも地方創生のお役にたてるように、どんどん新しいご提案をさせていただきたいと思っています。

プロフィール

吉田淳一(よしだ・じゅんいち)

イノベーション推進部 オープンイノベーション事業創発室 部長
1987年、NTT入社。決済サービス分野の企画・運営に携わり、現在は観光・農業・食・コンテンツ配信領域の事業創造を担当。世界のICTトレンドなどに関する講演「吉田劇場」を、年間70講演以上実施中。観光庁「Visit Japan Plus」戦略検討メンバー(~2014)、経済産業省「おもてなしタスクフォース」メンバー、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会理事など、社外役職も多数。

神田主税(かんだ・ちから)

広報部 課長代理
2000年にシステムインテグレータである株式会社NTTデータに入社。入社後5年間はシステムエンジニアとしてエンタープライズ系の開発を担当。2005年に広報職へ異動、異動後はIT系の展示会やセミナー、勉強会などのイベント企画運営に関わる。現在はNTTデータのフューチャーセンタ豊洲INFORIUMをベースにアイデアソンやハッカソンなどの共創型イベントを仕掛けている。

目的

  • 都会と地方の空間共有を実現

課題

  • 少子高齢化や交流人口の伸び悩みを打破すべく、ICTを活用した地方活性化の推進を目指す中で、新規サービスの開発に挑戦。

効果

  • 宮崎県をテーマに事前に行ったアイデアソンの結果から、ハックしたいシーンとして「料理+民泊」「買い物+民泊」「交流体験+民泊」の3つのシーンを想定。チームごとで検討されたアイデアはいずれもICTの活用提案がしっかり盛り込まれたもので、「ICTを使った空間共有」を果たすものだった。実際に農家民泊も実施され、今回の取り組みをきっかけに、他の自治体への横展開も視野に入れた活動が期待される。

導入の決め手

  • ハッカソンを実施して終わりではもったいないとの考えが、方針にもぴったりと合った上、一緒に作り上げようという姿勢もあったから。

時期

2016年3月/2days

参加人数

約50名

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