<株式会社シルキースタイル様事例紹介・前編>
☑POINT
会社のあり方や目指すものを端的にあらわし、企業成長のために欠かせない「ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)」。けれども、社員一人ひとりがMVVを意識し、ビジネス発展に活かせている会社は、意外に多くないのかもしれません。シルキースタイルは、さらなるビジネスステージへと進んでいくために、創業時からあったMVVを新しいものに再構築し、社内外への浸透をはかるためのワークショップを行いました。
<今回お話を伺った方々>
株式会社シルキースタイル 代表取締役 山田 奈央子さん
代表取締役 上田 美央さん
マーケティング事業部 部長 上原 信之さん
コーポレート部 志田 葉子さん
ビジネス開発部 南 沙耶 さん
株式会社シルキースタイルは、女性がいくつになっても自分らしく輝けるような社会をサポートすることを目的に、美容機器や化粧品の開発・販売を行っている会社です。代表取締役である山田奈央子さん、上田美央さんが二人で立ち上げました。
「女性のキャリアとビューティーを継続できる社会を目指す。当時私たちが思い描いた未来予想図が、そのままシルキースタイルのMVVとなりました」(上田さん)
熱い想いを乗せたMVVを糧に、会社は順調に成長を遂げていきます。そしてビジネス領域が広がり、二人中心の企業から組織化していくフェーズへと歩を進めるにあたり、以前から抱いていた課題感と向き合うことにしたのです。
「会社がどこを目指していて、どうアクションを起こしていかなくてはいけないのかという共通認識のためには、MVV を個々が意識することが重要です。けれども、私や上田が大切にしてきた『ストーリー性を持ってモノづくりをする』ということに関して、同じ熱量で社員と共有できていないように以前から感じていました」(山田さん)
「MVVが社員間に浸透していないのでは」「自分事化できていないのでは」……そこで、山田さん上田さんは、一人ひとりが会社の一員として積極的に動き、そして、より大きな組織にしていくために、会社が目指す場所へ進むための言葉選びと再定義し、新たなMVVを作成することにしたのです。
経営陣と管理職スタッフで考えたMVVのベースを社員全員で協議し、最終決定したい。そしてさらに、皆で生み出したMVVを自分事化してとらえていきたい。そのための施策をHackCampに依頼し、二度のワークショップを通して課題解決へと進んでいくこととなりました。
そもそも、シルキースタイルのMVVを社員はどう捉えていたのでしょうか? 何人かに話を聞いたところ、立場が違うがゆえの温度差が表面化しました。
会社の規模が大きくなり、より多くの人が同じ目標に向かっていくためには、MVVは欠かせないもの。どのビジネスもMVVに紐づいている。(上田さん)
MVVを積極的に発信していくことで、社員一人ひとりが自分事化して考えることができるのではないか。(山田さん)
MVVにはすごく共感しており、経営陣が目指す場所も理解できていた。ただ、それが現場スタッフにも伝わっていたかというと、少々懐疑的。自分の役割として、代表取締役の二人の言わんとすることを現場に咀嚼して伝えることが必要だと感じていた。(上原さん)
MVVを把握はしていたが、正直日々の業務に追われて、あまり意識できていなかった。(南さん)
会社のMVVが、なんとなく自分とは遠い話のように感じることがあった。(自分が売り上げに直結する部署ではないこともあり)積極的に意識して仕事をするというところまで落とし込めていなかった。(志田さん)
これら意識の乖離が、ワークショップを通じてどう変化していくのでしょうか?
2021年の年末に行われた第1回ワークショップでは、「MVVを自分事化し、意識した行動をする」ために、次の内容を盛り込みました。
問いづくりを通じてMVV(ミッションとビジョン)を自分たちなりに考える
ビジョンを実現しているシルキースタイルの3年後のありたい姿について共通認識を持つ
MVVに基づいたアクションにつなげていく
じつは、シルキースタイルとしては初めてのワークショップ。久々にリアルな場でスタッフ一同が会し、膝を突き合わせて語り合ったことで、さまざまな刺激が生まれたようです。
「一番面白かったのは、合意形成を進めていく過程でしたね。普段の会議だと、どうしても声が大きい人の意見に偏りがちで、あまり発言しない(できない)人もいる。でも、HackCampさんの手法では、8割の合意形成で良いから、みんなで意見を出し合い、必ずみんなで選んでいく。すごく興味深かったです」(上原さん)
「問いづくりをはじめ、何をどう進めたらいいかが明確だったので、とてもやりやすかったと感じました。一般的にこういったワークショップは、アイデア出しがメインの少し抽象的な内容のイメージでしたが、手順を追って考えながらできたので楽しかったです」(南さん)
「ファシリテーターの方がいろいろと引き出してくださったので、どんどん話が広がっていって面白かったです。考えも浮かびやすかったです。」(志田さん)
また、ワークショップで浮き彫りになった課題感を解決するため、行動に移したケースも多々あります。たとえば、個々のメンバーともっとコミュニケーションを増やすべきだと感じた上原さんは、それまで隔週で行っていた1対1のミーティングを週に一回に増やしました。
「30~60分のミーティングで、半分は業務について、残り半分はそのスタッフの本音がどこにあるかを推しはかりながら、相手の隠れた部分を引き出すよう努めています。おかげで、業務もスムーズになりましたし、相談しやすくなったと言われるようになりました」(上原さん)
第一回目のワークショップを終え、それぞれが感じた想いを聞いてみると、社員間の距離の変化やMVVへの意識改革が生まれたことがわかります
「HackCampさんに依頼することを決めた理由でもありますが、ワークショップを通じて、限られた時間の中で形としてアウトプットをして、結論まで決め込む部分がとても良かったです。この手法であれば、MVVを自分事化できるのではと期待していましたし、実際にMVVに対する理解が深まったという声も聞こえてきています」(上田さん)
「スタッフのマインドチェンジは一回目でほぼ出来たのではと感じました。最初は、ワークショップを行うこと自体に迷いもありましたが、やって良かったと感じています」(山田さん)
「これまではコロナ禍ということもあって、社員間でのコミュニケーションがあまりなかったのですが、ワークショップを通じて密に話すことができました。同じチームのメンバーがこんなことを考えていたんだと知ることができたことは、仕事を進めていくうえでもすごく大きな収穫でした」(南さん)
「ワークショップ前よりも、MVVを身近に感じられるようになりました。また、これまで話す機会がなかった人たちと会話することができ、その後もコミュニケーションの機会が増えました。ワークショップ前よりも、社員間の距離が縮まったと感じています。他部署がどんなことをやっているのかを知る良い機会でもありました」(志田さん)
一方で、こんな意見も。
「正直、MVVへの意識が変わったかというと、私もスタッフも、そこまで大きな変化は見られなかったような気がしています。ただ、経営陣が描いている会社の未来が壮大である一方で、現場のスタッフたちも、それぞれが未来を向いていて、経営陣の想いにポジティブに共感していることが伝わってきたんですよね。そのあたりがもっと顕著に見えると、新たなシナジーが生まれていくのではないかなと感じました」(上原さん)
その他にも、MVVを再構築して共通認識をはかったからこそ、生じた課題があるようです。次回は、1回目のワークショップを経て生まれた課題感をどのように解決へと導いていったか。そして、今現在、実務にどう生かされているかを追いかけます。