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学校の探究学習にも活かせる問いで行うアイデアソン
国立研究開発法人 情報通信研究機構 様

☑POINT

これまでHackCampでは、企業や組織、大学生向けにワークショップを開催することが主流でしたが、ご縁あって中高生向けのアイデアソンを行いました。中高生が研究者と共に「問い」を通してテーマを探究していくこの取り組み。一体どのような化学反応が起こったのでしょうか?

中高生向けのアイデアソンを開催
テーマは「問いを通してテーマを探究する」

SSHという言葉をご存知でしょうか。Super Science High Schoolの略で、先進的な理数教育を実施するとともに、創造性や独創性を高めるような活動を積極的に行う高等学校等のことを言います。そんな、研究者のタマゴであるSSHの生徒たちが多数参加するイベントが、2022年11月に開催されました

その名も「けいはんなサイエンスフェスティバル2022」。京都・大阪・奈良の3府県にまたがるけいはんな学研都市(正式名称:関西文化学術研究都市)において、SSHの連携中学・高校の生徒や教員、地域の人が集い、大学の研究者による講義や生徒たちの研究発表を通じて、科学に親しみ学び合うイベントです。

同イベントにおいて「けいはんなR&Dフェア2022」の取組の一企画として、けいはんなの最先端技術の研究テーマについて「問い」を活用しながら探究する「問いで行うアイデアソン」を国立研究開発法人 情報通信研究機構から委託を受け、HackCampが企画・運営いたしました。

なぜいま「問い」が重要なのか?QFTメソッドとは

「問いで行うアイデアソン」は、その名の通り「問い」を主軸にしたワークショップです。では、なぜいま「問い」が重要なのでしょうか。その答えのヒントは、2020年から小学校、2021年から中学校、そして昨年2022年からは高等学校でスタートした、新しい学習指導要領にあります。

今回の学習指導要領改訂で注目されているのが、探究学習。自ら問いを立て、その解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、周囲の人と意見交換・協働したりしながら進めていく学習活動のことです。

出典:文部科学省「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」(平成25年)第2章

私たちが生きる現代社会では、日々さまざまな課題が生じています。そんな状況下で、安易に目の前の状況だけを見て考えられる解決策に飛びつき、何の疑いもなくその策を受け入れるだけでは、ビジネスにおいても社会においても、新たなイノベーションは生み出されません。答えを求める力以上に、深く問いを立てる力が必要とされているのです。

つまり、さまざまな問題や議題の種を見つけ出し、問いを通じて探究していくことこそ、これから社会に出ていく児童・生徒たちにとって重要な”基礎体力”であり、探究学習が重視される所以だと言えるでしょう。

そこで、本イベントで活用したのが、QFT(Question Formulation Technique)※1。アメリカで開発された問いづくりメソッドの基本プロセスで、主体的・対話的で深い学びを実現する方法としても注目されています。実際に、ハーバード大学院大学のオンラインプログラムにも採用されているメソッドです。

このQFTの手法を用いれば、答えのない問題に対して、誰でも簡単に生み出せる「問い」の形で考えることができ、未知のテーマについても、短時間で行動に移せるようになるのです。

※1

HackCampは、QFTを開発した米国の非営利団体「Right Question Institute」(本部・マサチューセッツ州)と、ビジネス分野でのQFT活用が可能となるライセンス契約を締結。

「学校での探究学習に活かしたい!」
2時間で学生たちが導き出した問いとは

今回のアイデアソンで設定されたテーマは4つ。

・次世代発酵食品

・ロボットのこころ

・多言語音声翻訳

・リアルで表情豊かな3Dアバターの構築・再生技術 REXR

この中で、興味があるテーマをひとつ選び、チームに分かれてアイデアソンを展開していきます。

アイスブレイク(問いの練習)

まずはアイスブレイクとして、問いの種類の理解と、問いの変換についての練習です。

これから自分たちが生み出していく問いは、求めている課題に直結するか、オリジナルな問いであるかを考えるための土台を作ります。

ここで特筆すべきは、各テーマごと、大学院や企業、研究機関に所属するその道の専門家たちからテーマに関する最新のインプットを受け、そして一緒に問いを作っていったという点です。生徒たちは、専門家の方々が提示する刺激的な問いから、各自でさらに重ねて新しい問いを発想し、探究の入口となる内容を発表する、という貴重な体験をしました。

さらに注目したいのは、専門家の方々と生徒たちが直接ディスカッションしたわけではないということ。にもかかわらず、問いを生み出すことで、お互いの考えをぶつけ合う以上に、両者の思考が絡み合い、新しい価値を創造できたことは、大きく評価すべき結果ではないでしょうか。

問いのワーク(QFT)

ここまでは、いわばウォーミングアップとも言える問いづくりのレッスン。そしていよいよ、本題となる問いづくりのスタートです。

ファシリテーターは、あくまで問いをつくるための支援者であり、テーマ(問いの焦点)を示します。そして、参加者自身が問いをつくる主体であり、自分が解きたい問いをつくっていきます。

STEP1:問いの焦点

STEP2:問いづくりルール確認

STEP3:問いづくり

STEP4:問いの分類

STEP5:問いの変換

STEP6:優先順位づけ

STEP7:ネクストアクション

上記7つのステップを踏みながら、各自で問いを生み出していきました。

実際に生徒たちから生み出された問いをいくつかご紹介します。

テーマ:次世代発酵食品

・発酵食品の成分の中でも、治療に役立つ成分だけを取り出して、それを人体に投与し病気を治すことはできるか?

・遺伝子組み換え食品は、元の食品と言えるのか?

テーマ:ロボットのこころ

・父と同じ役割のロボットは、父となりうるか?

テーマ:リアルで表情豊かな3Dアバターの構築・再生技術 REXR

・アバターを持つ人と持たない人の格差をどのように埋めるか?

テーマ:多言語音声翻訳

・非言語コミュニケーションは、カメラで判別し、翻訳できるか

・どうすれば少数の人々が使う言語が失われないようにできるか

このほかにも、生徒たちのやわらかな頭と自由な発想から生まれた問いの数々に専門家の方々も感嘆の声を漏らしており、「今後の研究テーマにしたい」という声も上がったほど。アイスブレイクを含めて約2時間という限られた時間の中で、これだけの充実した問いを生み出せたことは、今後の学生生活、そして社会に出てからも必ずや役立つことでしょう。

ワークショップ後の生徒たちの声

ワークショップ後、生徒たちに問いづくりのワークの印象を尋ねると、「テーマそのものに対する理解が深まった」「楽しく(気楽に)参加できた」がどちらも全体の71%、「人によって多様な理解があることを知ることができた」「参加メンバーの価値観を知ることができた」がそれぞれ59%という結果になりました。

下記が、実際に寄せられた生徒たちからの感想です。

  • 硬い雰囲気の取り組みだと思っていたけれど、とても楽しかった。また参加したい
  • 普段、私たちの思考は固定されているのだと気づいた。視点を変える手順を教えていただけて、これからの研究がはかどりそう
  • 答えよりも問いを優先し深めることで、問題解決をより早く行えることが分かった
  • 自分のアイデアを周りと共有することで、そのアイデアをさらに洗練されたものにできた
  • 授業で習うようなディベートとは違い、評価をしたりしないことでより多くの意見を出せることがわかった
  • 誰にも否定されない環境だと問いが出しやすかった
  • 今日学んだことを学校に持ち帰り、自分たちの学習に活かしたい

なかには、「時間が足りなくて、思うような深い問いを作れなかった」という声もありましたが、ほとんどの生徒たちにとって、刺激的で、楽しく、問いの大切さを実感できたワークショップだったことが伺えます。

問いのワークづくりは、大人にも子どもにも有効

今回のワークショップを通して、問いづくりはビジネスの世界だけでなく、子どもたちの学習の場にも欠かせないステップだということがわかりました。

さらに言えば、学校の教員や塾の講師など、子どもたちの指導者向けにも、非常に有効な手段であるでしょう。

探究学習が指導要領に加わり、従来の授業スタイルから大きく様変わりしています。新しい学びに関してどのように授業を進めていけばいいのか、試行錯誤されている先生方も多いと耳にします。

そんななかで、本イベント参加校の先生から「探究学習の授業は導入が難しく、どうしても固い話のインプットから入ってしまうことが多かったけれど、こんなにライトに楽しく、しかも生徒たちの興味関心を引き出せる手法があったとは驚きました」との感想が寄せられたことは、特筆すべきことではないでしょうか。

「問いで行うアイデアソン」が、生徒たちだけでなく探究学習の指導をする先生方の一助にもなるよう、HackCampではこれからも問いの価値と可能性を訴求していきます。

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