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課題発見力を鍛える!主体的な行動を促す「問いづくり」の効果と方法論

2022.8.31

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副代表の矢吹が、日本経済新聞社主催の展示会「ヒューマンキャピタル2022 /ラーニングイノベーション2022」の中で講演を行いました。

正解を探すのではなく、課題を発見することが、主体的な行動につながる。そのためには「問いづくり」が有効であるという内容になっており、変化の激しい時代に、組織をボトムアップ型に変えたい / メンバーに自律自走してほしい、という課題感をお持ちの方に、特に共感をいただいた内容になっています。

以下、書き起こしのレポートとなります。ぜひご覧ください。

アジェンダ

  • イントローテーマ紹介、問題提起
  • 解決策よりも課題発見力が重要な時代
  • 主体的に行動する人の問いづくり
  • 探究的な問いをたくさんつくる(実践)
  • まとめ

本日のテーマ

近ごろは「問いづくり」に関する書籍も多く出版され、興味をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。今日は「主体的な行動を促す問い作りの効果と方法論」というタイトルのもと、具体的なTips・How toをお伝えします。

今回は、こんな仮説を設定しています。

「自ら考え主体的に行動できない人というのは、そもそも問いを作る力が弱いのではなかろうか」ということです。逆に「問いを作る力を持っている人は、主体的に行動できるのではないか」と言ってもいいのかもしれません。

解決策よりも課題発見力が重要な時代

重要なことは、正しい答えを見つけることではなく、正しい問いを探し出すことである。間違った問いに対する正しい答えほど危険とは言えないまでも役に立たないものはない
聞いたことのある方もいらっしゃると思います。答えではなく「問い」を探すことが重要であるというピータードラッカーのメッセージです。

最初の問いを間違えると、使えないアイディアが腐るほど出てくる

設立9年目を迎える弊社HackCampは、数多くの共創イベント「アイデアソン」や「ハッカソン」といった「解決策を作り出すイベント」を提供してきました。

アイデアソンなどに参加いただく方々には「アイディアの発散-収束」を実践していただきます。
「発散」で課題を設定し、課題に対するアイディアを出し、解決策を考えて「収束」に至るのです。

我々は主に、アイディアの「発散」のところに取り組んできたのですが、やってみてわかったことがあります。それは、課題設定つまり「最初の問い」を間違えると、役に立たないアイディアが腐るほど出てきてしまうということです。

新規事業開発をご一緒することがあるのですが、そもそもの企業理念やビジョンに連動しない課題や、間違った問いを設定してしまったりすると、それに対していくら頑張っても、結局その会社からは「使えない」と門前払いを食らったり、審査に通らなかったり、などといったことが起き得ます。

正しい課題なのか、または正しい仮説に基づいて考えてるのか、というところが非常に重要です。

「解決策」というのは、検索すれば山ほど出てきます。ソリューション自体は、たくさんありすぎる。むしろ正しい問い、最初のテーマを見つけることの方が大事なのではないかと考えられます。今までは「アイディアの発散―収束」に力をいれてきましたが、これからの時代には「問いの発散―収束」が重要であると。

これが実際に、アイデアソン・ハッカソンを数多くやってきた我々が感じ、考え至ったことです。

正しい問いを作り正しい課題を見つける力こそに価値がある

問題解決が求められるとき、現代では、解決策を見つける力よりも、正しい問いを作ったり、正しい課題を見つける力の方が希少価値が高いと言われています。

経産省の「未来人材ビジョン」レポートによれば、2050年に最も必要な力は「問題発見力」だとされています。問題発見力、つまり課題発見力が重要だということです。

数多くのアイディアワークショップをやってきた我々があえて言いますが「アイディアにはあまり価値がなさそう」なのです。むしろアイディアを出す手前の段階が重要。適切な問いの設定なしに、ソリューションをいくら持ち込んでも、なかなかうまくいかないのです。

主体的に考えられる人は、この「適切な問いを見つける力」すなわち「課題発見力」が非常に高いため、自分で動けるのだ、ということをこのあと説明します。

主体的に行動する人の問いづくり

冒頭で「主体的に自ら考え動ける人は問い作りが上手い」という仮説を立てました。では、上手い問い作りとは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。以下の例をご覧ください。

指示を受けて行動する人の場合

ごく普通の若手社員が、営業部門で販促チラシの作成を頼まれました。「チラシの作成と手配をよろしく」といった作業指示です。指示を受け、若手社員はここで質問をします。

「目的はなんですか」「対象者は誰ですか」「納期はいつまでですか」「参考になる事例やイメージはありますか」など。5W3Hできちんと聞けていますし、仕事がちゃんとできている印象を受けるのではないでしょうか。指示された作業に対し、必要な情報を確認する問いならば作れることが分かります。

主体的に行動する人の場合

では、特に販促チラシの指示がなく、例えば上司が「売り上げが下がっちゃったな」とつぶやいているとします。主体的に行動する人はこんな場合どうするのでしょうか?

まず「通常なら販促チラシというツールを使うようだが、それはどの程度の効果があるのだろう」と調べてみます。しかし効果がよく分かりません。

  • なぜチラシの効果がわからないのか?
  • なぜ販促チラシを未だにアナログで配ってるのか?インターネットやSNSを活用しないのか?
  • チラシの効果がないのはターゲットが見えないからでは?

単なる5W3Hではなく、自分なりの仮説や探究的な問いが生まれてきていることがお分かりいただけると思います。

そして、現状を疑うクリティカルな視点を含めたリサーチをもとに、仮説を立てます。

ターゲットは忙しいワーキングマザーである。
・そもそも商品チラシを見る暇もないのではないか。
・SNSでアプローチするとより良いのではないか。

仮説をもとに施策を考え、仮説を検証します。
SNS広告でお試しキャンペーンを打ってみて、仮説検証してみよう!

良いかどうかを確認してみようと、自ら仮説を作り検証を行う。これがいわゆる主体的な行動です。

具体的な指示もなく「とにかく自分で考えて動け」と言われるだけでは、今まで5W3Hで質問をしていた若手は動けません。しかし、探求的な問いをたくさん出して、課題を探して仮説を設定し検証する。この方法ならば、自らトライアンドエラーを積み上げつつ進めることができます。

問いの根底にある「売り上げが落ちている理由」や「上司が困ってる背景」など、現状の業務を疑うという観点が必要になってきます。そういった探求をして自分なりの仮説を作る力こそ、主体的な行動には不可欠なのではと我々は考えています。

探究的な問いを作れる人と作れない人の違い

■探求的な問いを作れる人
・自分で課題を設定をする
・仮説を設定する
・仮説を検証する
最低限これぐらいは必要だとわかっていて、自分に問いかけていきます。

■探求的な問いを作れない人……この人は指示を待っているタイプです。
・どうすればよいか?
・ターゲットは?
・いつまでにやるか?
・なぜこれをやるんですか?

同じような質問に見えて、実は全く次元の違う質問をしていることがわかります。大きく違うのは「自分ならではの問い」を作っているかどうか。自ら抱いた違和感や疑問から生まれる問いは、自ずと主体的な行動を呼び起こします。

自分が生み出した問いは解きたく(行動したく)なるもの

主体的にアプローチしてみたいと思うことで、初めて自分ならではのアクションや答えを取りに行く行動が生まれます。作業指示に対して、義務的な問いを作る行動との違いはそこにあります。

例えば、夏休みの子ども科学電話相談。専門の先生方を唸らせるような面白い相談が聴けるラジオ番組ですが、あの番組に出演する子供たちは、自分の疑問や好奇心に突き動かされ、知りたくなって、電話するという行動を自ら取っているんですよね。

探求的な問いをたくさんつくる

ここから本題です。

「探求的な問い作りが大切なのは理解したが、問い作りとはどうしたらいいのだろうか」「うちの社員に問い作りなんて……、決まり切った問いしか作れないですよ」などと、お嘆きになる方は多いかもしれません。

ですが、探求的な問いをたくさん作るための、具体的な4つのステップがあるのです。

ここからは、会場の皆さんと一緒に実際に問いを出しながら、進めていきたいと思います。

1.問いをたくさん書く

まずは問いをたくさん書き出してみてください。

仮に、皆さんは「自律自走について社員を教育したい、でもやってくれないと不満・課題感を持ってる新人担当者」とします。この課題について考えるにあたって、まずは皆さん自身が思い付く「問い」を考えてみてください。

自律自走できない』

このメッセージから思いつく問いをできるだけたくさん書き出してみましょう。すべて疑問形・質問形式で。同じような問いがあっても構いません。

※会場では以下のような問いが出てきました。

・自律自走できないことによるデメリットは
・自律自走できないとどんな問題が起こりますか
・自律自走できてる状態ってどういう状態?
・仕事へのエンゲージメントは計れないか
・自律自走の障壁は何か
・やり方がわからないのかな
・自律自走ができるとは、具体的にどんな状態を考えてますか
・なぜ自律自走することが大事なのか
・時間がないのか
・自律自走するとどうなるの
・自律自走の定義は

このようにたくさん問いを出していきます。他の人の問いを見ながら思いつく問いを書き足していってもOKです。ここまでの作業が準備段階となります。

2.問いを2つに分ける

次に出てきた問いを、「開いた問い(Open Question)」と「閉じた問い(Closed Question)」の2つに分類します。

■「Closed Question(閉じた問い)」とはYes/Noで答えられる問いを指します。例えば「人間とAIに違いはありますか」のように「ありますか?→はい」と一言で答えられる問いはこちらに分類されます。

「Open Question」とは、説明を要する質問を指します。答えをすぐには出せない質問や多様な意見を聞き出せる質問、これらはOpen Questionと呼ばれます。「人間とAIの違いは何だと思いますか」という問いなどは、人によって様々な答えが出るOpen Questionに分類されます。

先ほど皆さんが書き出した問いはどうでしょうか。ご自分の作った問いがOpenかClosedのどちらに分類されるか見返してみましょう。

例えば「なぜ~なのですか?」など、5W3Hが入る問いはOpen Questionになる傾向にあります。また「〇〇は△△ですか?」など、何らかの仮説をもとに問いかけている場合はClosed Questionになる傾向にあります。

テーマに対する知識や経験が不足していたり、自分の意見や仮説がない場合は、Open Questionを作る傾向にあります。

その一方で「閉じた問い」テーマについての専門性や仮説を持っている、自分が何かアイディアを持っている場合や意見がある場合には、Closed Questionが出る傾向にあるようです。

自分の問いの傾向を知る

このように分類していくと、ご自身の作る問いの傾向から、当該テーマに対して「仮説が多い」のか「知識や前提がない」のかを分析することができます。

私たちはとかく「Open Questionが良い」と評価してしまいがちです。確かに相手に多く考えさせたいコーチングの場合などはそうかもしれません。

ところが、Closed Question でAかBかと選択を狭めていかないと、意思決定をすることができません。Openに選択肢を広げてClosedで絞っていく「発散-収束」をうまく使って広げ縮める必要があるのです。

問いの分け方(販促チラシのケース)

販促チラシの例を使って問いを分類してみましょう。

  • 販売効果がどれくらいあるんですか。(どれくらいあるか→Open)
  • 魅力的な販売チラシを作れば売れ着は上がるんですか。(上がるか上がらないか→Closed)
  • なぜインターにインターネットSNSを活用してないんですか。(なぜ→Open)

Open Questionばかりの方は、何か議論してるつもりではあるが結論に行き着かない傾向があります。未知のテーマに対して、自分でOpenの問いを投げかけても答えは出ません。例えば今回の「自律自走=自分で考えて動く」というテーマの場合、相談する相手がいない可能性もありますよね。

また、Closed Question ばかりになる方は、バイアス・前提条件・固定概念などが影響している場合があります。Closed が多い方は、ご自分の問いに、どんな仮定や前提が入ってるかを見直してみると良いでしょう。

3.問いを変換する

問いを分類し、ご自分の問いの傾向を確認できたら、次はその問いをOpenはClosedに、ClosedはOpenに変換します。開いた問いの方は、自分の意見や仮説が入るとClosedに変わります。Closedの問いは、前提やバイアスを取り払うとOpenにできます。

Open→Closed
例えば「なぜチラシの効果が下がっているのか」というOpen な問いの答えを導くため、自分の仮説を入れ「ターゲット層はSNSの口コミを参考にし始めてるからではないか」というClosedな問いに変換しました。変換することで調査不能と思われた問いが、検証が可能な問いとなりました。

Closed→Open
反対に「魅力的な販促チラシを作れば売り上げが上がるのか」というClosedな問いを変換してみます。

まず、バイアスや前提がないかをチェックすると、そこには「魅力的なチラシを作っても無駄ではないか」「チラシには意味がない」という思い込みが含まれていることが分かりました。前提には、ある意味ネガティブな意見が含まれてる可能性があります。

ここから、バイアスや前提を取り払うと「販売チラシ以外での販促方法は他に何がありますか」という問いに変換されます。自分の問いを見て、どのようなバイアスやネガティブ要因が含まれているかを俯瞰して見るのです。

4.問いを選ぶ

最後に問いを選出します。最初に書き出したたくさんの問いの、変換前・変換後を見ながら「今、どの問いについて考えるべきか」「なぜその問いを選んだのか」を選び抜きます。そうすることで、その問いを解きたい理由も含めて語れるようになります。

自分が解きたい問いを見つけると、その答えを知りたくなります。

多くの自律自走できない方は、そもそも仮説が作れないから何をしていいかわからないし、何を考えていいかわからない。しかし、「私わかりません」をそのままにせず、「わからないことを問いに書きなさい」と助言して、その問いをClosedな問いに変換させたら、その人も何かしら1つは得られます。

問いをたくさん作っていると、テーマに関してかなり知見が増えてきます。今回ご参加いただいた皆さんも、短い時間ながら「自律自走」というキーワードに関して多くの視点に気付かれたのではないかと思います。他人の問いを多く見ることで、自分だけでは考えつかないような観点に接することができるのも問い作りの特長です。

本来このワークは、グループ・オンラインで行います。問いが問いを経由して、アイディアや視点を共有できるのです。こういう問いを選びました。選んだ上でこれをやりましょうと決めるのです。このときは「なぜ~」というOpen Question を選んでも構いません。その問いについて探求すればよいのです。

ただ仮説がなければ行動できないという点において、Closed Questionの方が良いかなと個人的には思っています。

冒頭の例で言えば、例えばSNSのキャンペーンを張ってみようとしたとします。たくさんの問いから認識しなかった課題を見つけて、そこから仮説を検証していくことができます。

問題解決とか、分析とか、発想とか言うとややこしいのですが、「問いを作りなさい」「分けなさい」「分類しなさい」「変換しなさい」と非常にシンプルです。

探求を当たり前に学んだ若者たちが社会に輩出される未来

ここでご紹介したワークは、小学校・中学校・高校の授業で問い作りの手法として使われています。今年の4月からは高等学校で「探究学習」という授業がスタートしています。「探究学習」とは、自ら課題を設定し、リサーチし分析して発表するという学習方法で、文科省の指導要綱にも含まれています。

つまりこれからの子供たちは暗記ではなく、自ら問題発見・問題解決をしなくてはならないと文科省が言っているのです。したがって10年後には、探究を当たり前に身に付けネットも使いこなす学生が社会に入ってくることになります。

逆に、我々のようなビジネスパーソンは「探求」の経験が浅いため、その分野に対する準備がまだまだ整っていない状況です。そういった意味でも、問い作りは今の私たちにとって非常に大事な力になると考えられます。

まとめ

冒頭で、下記の仮説を設定しました。

主体的に行動できない人間は、考えるべき問いが足りないのではないか

この仮説に基づき、本日のテーマである「課題発見力を鍛える・主体的な行動を促す」、そのための解決方法についてお話いたしました。

問いを作りましょう。指示された作業をこなす5W3Hの問いではなく、あなたならではの探求的な問いをたくさん作りましょう。Closed Questionもあれば、Open Questionもある。状況を踏まえた上で生まれた問いを変換して、たくさん並んだ問いをよく見て、課題を見つけましょう。そこに解くべきテーマが見えてくるということです。

たくさん問いを出し、課題を探し、仮説を設定し検証する。

出た問いの中から「自分ならではの問い」を選ぶ。これが主体的に動く一番のキーポイントになります。自分ならではの問いを作ると自分で解きたくなる。

自らの問いが主体的な行動を促していくのです。

本日はありがとうございました。

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