ビジョン形成ワークショップ事例 コマツの未来をつくる第一歩に

世界で働く現場社員がフルオンラインでビジョンを探る

コマツ様 事例インタビュー

建設・鉱山機械メーカーの最大手・コマツ(東京都港区)は、2020年4月から6月にかけ、現場の中堅社員29人によるオンラインワークショップ(以下、WS)を実施しました。同社の未来を探るプロジェクトの一環である本WSの企画・運営を、HackCampkが担いました。

Covid-19の影響で全日程をオンライン上で展開しなければならなくなったこと、さらに米国・欧州で働く社員(英語ユーザー)のため、英語対応が必要だったことなど、いくつかの課題をクリアしながら実施した本WSについて、同社CTO室室長付・花本忠幸さんに話を聞きました。


コマツ CTO室室長付 花本忠幸氏

 

「バックキャスティング」でたどりついた

1921年の創立以来、トップランナーとして日本の建設機械業界をリードしてきた同社は、2019年末から「未来のコマツ」を探索するプロジェクトを開始しました。現場を担う社員自身による思索と対話を通じて、コマツの未来像を描くボトムアップ型のビジョン探索を進めるにあたり、伴走役として様々な会社を検討していた花本さんが、HackCampにアクセスした決め手は「バックキャスティング」というキーワードでした。

「未来のありたい姿・あるべき姿」を短時間で合意形成できるメソッド「視覚会議」は、バックキャスティングアプローチの最上位である「ゴール」を、ステークホルダーでつくることに特化しています。

弊社ウェブサイト等でこの手法を知った花本さんとHackCampの矢吹博和・菊井深雪との初顔合わせは、2020年1月でした。その際、未来学やSFを素材に用いたアイデア創出法など、多様なアプローチについて議論したといいます。「話してみて、面白いという感触があった」と花本さん。

さらに、社内メンバーだけで会社の未来を考えても「偏ってしまうのではないか」という恐れがありました。「現場を知り尽くしているメンバーだけに、様々なことに配慮してしまい思い切ったアイデアが出しにくい」という懸念を払拭するため「全く違う分野の人たちと接し、刺激を受けることも本プロジェクトの目的でした」と、HackCampを選んだもう一つの理由を挙げました。

次々と発生する課題〜「できること」には即・対応

本プロジェクトのキックオフとなった2020年4月、Covid-19による感染者はすでに世界中で爆発的に増加しており、東京をはじめとする首都圏には緊急事態宣言が発出されました。当初は顔を合わせたコミュニケーションによるWSを想定していたものの、リアルに会って議論をすることそのものができない状態となってしまいました。

スケジュールに目途が立たない状況下でも、できる限りプロジェクトを進めたいと考えていた花本さんは「『オンラインでできますか?』と聞いたらすぐにHackCampさんから『できますよ』という返答があり、ホッとしました」と当時の心境を振り返りました。当初講師を予定していた事業構想大学院大学客員教授の小塩篤史氏によるインプットセミナーは動画として提供することで対応しました。

HackCampは、もともとオンラインワークショップの手法について研究を重ね、様々なツールを試し、実践もしていましたが、世界の複数拠点に散らばる外国人を含む4グループをオンライン上でファシリテーションする事態はレアケースでした。

「想定外」の状況のなかにあっても、プロジェクトが迷走しないためにHackCampが提案したのは、運営チームメンバーによる「視覚会議」でした。「この企画を通じて、コマツは何を実現したいのか?」というビジョンが可視化され、共有されていないとプロジェクトは少しの波で揺らいでしまいます。

HackCampでは、キックオフのタイミングで意思決定者・関係者を交えた合意形成の時間をとることが、その後のプロジェクト成功の鍵を握っていると考えています。今回も事務局と各事業部門代表による視覚会議を行うことで、プロジェクトの価値・意義を理解しあい、方向性を整えていきました。


視覚会議ホワイトボードイメージ

オンラインホワイトボード「Mural」を参加メンバーがストレスなく使えるか、英語しか使えない外国人社員のコミュニケーションを円滑にするにはどんな仕組み・体制がいいか、時差がある海外社員の参加に適したWS時間帯はいつかー。WS当日を迎えるまでに調整すべき課題は山積していました。

このため、プロジェクトマネジャーはメソッドの基本形を生かしつつも、現場の状況に合わせて、すりあわせながらワーク手法を調整していくプロセスで、最適な形を探っていきました。
普段の会議では「(会議前の)調整段階で理解を得て、会議では提案の採否を議論するという経験が多いので(やりながら考えるという状況は)どうなることかと見守っていた」という花本さん、そして参加する社員にとっても戸惑いがあったようでした。

また、グローバル企業ならではの障壁として言語の問題がありました。全員が英語ネイティブまたは英語堪能なチームは英語で進行をサポートしました。しかし、英語がそれほど得意ではない人も多いチームの中に、日本語を話せない海外拠点の社員が参加するというチームもありました。そのチームで英語によるファシリテーションをすると、日本人の思考が限定されてしまいます。一方、日本語を話さないメンバーにも十分に参加してもらう必要があり、会話に依存し過ぎないワークショップ手法や通訳サポートが求められました。

HackCampではMuralの付箋ワーク活用やDiscordによる通訳などで柔軟に対応し、参加した社員それぞれの「思い」の発露をサポートしました。
花本さんは「外国人社員の参加をどのように実現するかが課題でしたが、その点もプロジェクトマネジャーの菊井さんの英語力に助けられた」と評価します。

こうしたアジャイル的なプロセスは「今になってみれば、そうした経緯も含め『社内では経験できない刺激』という意味の成果といっていいでしょう」と花本さんは一定の評価をしています。

「私たちの未来の物語」をつくる支援

今回のグループWSは、全2回・計6時間の日程で行われました。第1回目は、事業や社会の「現在・過去」を踏まえて未来を考える「9windws」による認識作業の後、個人とグループの対話を繰り返す「ゼブラブレスト」で、同社が実現したい未来の具体的なアイデアを発散するワークに取り組みました。


9windows ワークイメージ

 

第2回目は、第1回目に広げたアイデアを収束させるため、視覚会議やストーリーテンプレートを使って、事業部ごとに未来の物語を描くワークを行いました。すべてオンライン上のワークでしたが、プロジェクトメンバーは付箋に書き込む作業とその付箋を共有しながらの対話に混乱することもなく、集中して参加していました。2回目の最後には、チームごとに「未来のストーリー」を作り上げることができました。

今回、膨大な数の付箋やそれぞれが書いた作文が記録できたことは、オンラインワークショップの利点でした。「今後、私たちが会社の未来の姿を深掘りしていく際に、今回得られた社員のアイデアやビジョンは活用されていきます」と花本さんは話します。

業界トップクラス、グローバル企業でもあるコマツですが、社員わずか8人のベンチャーであるHackCampをプロジェクトの伴走役に選んだことについて、花本さんは「当初は期待半分、不安半分という気持ちは正直ありました」と率直に語ります。「ただし、終わった今となっては『よくやっていただいたな』という思いがあります」と、温かい口調で振り返っていました。

現場で日々奮闘する社員の思いや知見を引き出し、困難な中にあっても自分ごととして会社の「未来の物語」をつくるプロセスに挑戦させる。その姿勢そのものが、人を育てることであり、歴史ある同社の強さであることを、伴走者として体感したプロジェクトでした。

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