HackCamp

contact
  1. ホーム
  2. HackCampの学び場
  3. 記事
  4. 【ウェビナーレポート】後編 バックキャスティングをビジネスで活用するヒント

【ウェビナーレポート】後編 バックキャスティングをビジネスで活用するヒント

2021.6.3

「VUCA(※)時代において、いかに企業を成長させていくか?」

この課題を解決するために注目したいのが、バックキャスティングという手法です。前編では、2021年6月に開催したウェビナーの内容から、バックキャスティングの特徴、そして実際に導入した企業の体験談をお伝えしました。

後編となる今回は、いよいよ自社でバックキャスティングを導入しようとする際、なにからどうやって始めたらいいのか? という「HOW」の部分をフィーチャーしていきます。

※VUCA:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)といった予測不能な状態

バックキャスティング導入のための4つのパラダイムチェンジ

自社の組織にバックキャスティングを取り入れるためには、考え方や仕事の進め方など、根本的に変えなくてはいけないことがいくつかあります。この部分を疎かにしてしまうと、せっかくのバックキャスティングがうまく機能しない可能性も。事前に意識しておきましょう。

①スケールを変える

バックキャスティング導入をはかろうとする中で、多くの組織がぶつかる壁のひとつがこれまでの延長で考えてしまい、無難な目標になってしまうこと。というのも、フォーキャスティングのやり方の場合、目標設定が10%程度増程度というケースがほとんどです。
しかし、バックキャスティングの場合は、目標値を10倍に設定することも珍しくありません。つまり、企業成長のスケールを大きく変える必要があるのです。まずはこの変革から実践してみましょう。

②判断基準を変える

結果を求めることを最優先させると、どうしても過去の経験から基づいた確実で正確性の高い問題解決方法を探し出そうとしてしまいます。
けれども、バックキャスティングの特徴はこれまで経験がない、まったく未知のジャンルに挑戦できるということ。経験がないので、データが揃っていなくて当然です。チームメンバー全員が「やろう!」と目標に向かって進んで行けるのであれば、ロジックは必要なし。正確性よりもむしろ、納得性を重視します。

③プロセスを変える

バックキャスティングを成功させるためには、プロセスを変えること、つまり目標やゴールの合意形成が最大のポイントでしょう。
プロジェクトに参加するメンバー全員が、同じ未来を描いているか。ありたい姿をチーム全員で共通認識を持っておくことで、問題解決へのモチベーションが大きく変わってきます。

④メンバーを変える

多くの組織の場合、リーダーが目標を考えて決定し、メンバーに共有する「トップダウン」型が多いですが、バックキャスティングはその反対、「ボトムアップ」をテーマとしています。
多様なメンバーと一緒に、考え、話し合い、目標を決めていくのです。そのため、目標に向かって動き出すことがスタートではなく、目標を設定して共通認識にするための合意形成をおこなうところが、バックキャスティングの第一歩だと言えます。

バックキャスティングを叶えるステップ

ここからは、ありたい未来を描くための具体的なステップをご紹介していきます。以下は、バックキャストを取り入れ、共通のゴール・ビジョンに向かって自律自走していくため、私たちHackCampがおすすめしている「本質的なバックキャスティング実践ステップ」です

※イメージ

STEP① 検討するテーマの探究や未来洞察 

第一ステップとして、検討するテーマの探求や未来洞察から始めましょう。

■QFT(Question Fomulation Technique )

正解がないVUCA時代に求められるのは、解釈や探求しながら仮説を検証し実践する力。そのためには、質問力が不可欠です。

QFT(※)は、アメリカで開発され、主に学校の授業で活用されている問いづくりメソッド。テーマに対して質問形式でアイデアを発散し、それらのアイデアを「Yes/No、または一言で言い換えられる質問」と「説明を必要とする質問」の2種類に分類をしていく。ポイントは、それぞれを「変換」して言い換えるところです。

そうすることで、質問をより深く考えることができたり、他の人の質問の切り出し方を知ることで、自分自身の思考方法の見直しができたりといったメリットが生じます。

(※)QFTの詳細を言及している参考レポート >> 日本の人事部「HRカンファレンス2021-秋-」開催レポート > 自律的組織をつくるための人材育成 ~自ら考え行動する人材になるための「探究力」~

■未来洞察

現段階で起こりそうな未来だけに備えていても、他社との差別化ははかれません。

そこで、バックキャスティングでありたい未来を設定する際に、必要となるのが「未来洞察」です。未来洞察とは、非連続的な未来の仮説・シナリオを複数考えること。

たとえば、思考を整理するための9windowsという手法や、SF作品を観てこの先起こりうる未来を想像してみることが効果的です。

STEP② WHY(ありたい姿)を定義し、解釈や方向性を揃えながら、共通の目的や目標を決める

続いては、ありたい姿を定義し、共通の目的や目標を定めるステップです。

バックキャスティングにおける重要事項のひとつに、ありたい未来をチームで合意形成するプロセスがあります。

高い目標を上司から指示され、言われたとおりに行動するのでは、いずれ不満や組織に歪みが生じるでしょう。けれども、全員が同じ未来を見据え、問題点・解決策を話し合って見つけ出すことで、全員のモチベーションが上がり、目標達成度もアップすることが期待できます。

高い目標を上司から指示され、言われたとおりに行動するのでは、いずれ不満や組織に歪みが生じるでしょう。けれども、全員が同じ未来を見据え、問題点・解決策を話し合って見つけ出すことで、全員のモチベーションが上がり、目標達成度もアップすることが期待できます。

■テーマを設定する「問い」づくり


【達成したい年】【目的・前提】【検討項目】を書き出し、具体的な「問い」を作ってみると、より明確に向かっていくべき未来が見えてくるはずです。

■発散−収束

様々な課題や解決策を見つけていく過程で必要となるのは、発散―収束です。たとえば、あるべき姿、ありたい姿を定義するために、まず思考を可視化したり単語や動詞で考えたりして、課題の洗い出しをします。その後、それらを関連付けたり意味づけたり、組み合わせたりして、少しずつ重要なワードを選択。論点を整理して、最終的なゴールの形を導き出します。

当社では、10年以上開発改良を重ねてきている、視覚会議(50分で合意形成ができる会議手法)を使っています。

①、②のステップを踏んだら、最後は具体的な施策の検討・優先順位付けへと進めていきましょう。

バックキャスティング導入に関するQ&A

最後に、過去のバックキャスティングに関するセミナーで参加者の方から出てきた質問を、回答とともにご紹介します。

Q.バックキャスティングは、小さな組織でも効果的でしょうか?

A.はい、もちろんです。

もともとバックキャスティングは、環境問題の解決策を考えるうえで生まれたと言われています。それが徐々に広まり、ビジネスにも多くもちいられるようになったのですが、全社的に取り組むべき大きな問題解決はもちろん、プロジェクト、チーム単位でも広く活用されています。

まだ試行段階の会社も多いので、いきなり会社全体で実践すると言うよりは、少人数のチームから探索をはじめる例も多いですね。

Q.バックキャスティングの素晴らしさは理解しましたが、フォーキャスティングの方が適している場合もあるのでしょうか?

A.バックキャスティングとフォーキャスティングは、何年先の未来を見据えているかの時間軸によって適する方法が違ってきます。具体的には、下記の図の「テーマ例」をご覧ください。

たとえば、目の前の課題を即解決したい場合であれば、フォーキャスティングの方が良いでしょう。ただし、従来のやり方がうまく進んでいないと感じているのであれば、たとえ近い未来のことであっても、バックキャスティングを取り入れてみると良いかもしれません。また、新しいチームが立ち上がったときなども、バックキャスティングが適していると考えます。

バックキャスティングとフォーキャスティングを両方セットで使うこともおすすめです。

Q.バックキャスティングで課題解決をしていくとき、運用メンバーは専任が良いでしょうか? もしくは他の業務と兼任でも問題ないですか?

A.専任のほうがベターではありますが、よほどの組織でない限り、専任は難しいのではないでしょうか。そうなると、大半が兼任で新規事業にジョインすることになりますね。

Google社の20%ルールのように、現状の仕事時間の20%を新プロジェクトに費やす、といったやり方が良いと考えます。バックキャスティングの場合、個人だけの動きではダメなのです。たとえば会社側が一定のフレームとプロセス、場を提供し、メンバーは探索の部分でマインドをリセットすることからはじめる…といった流れはいかがでしょうか。

Q.大きな組織の場合は特に、どのようにバックキャスティングを進めていくのがスムーズでしょうか?

A.組織によってケースバイケースですが…たとえば、戦略は経営陣が決めたとしても、実践する細かなネタは下からあげていくのが良いでしょう。そして、合意形成の場は多段階で行うと良いです。

たとえば中長期計画を作る場合、まずは事業部長クラスのメンバーで3カ年のありたい姿を描きます。そしてその姿と価値基準を持って各チームに戻り、そこで再びありたい姿へのプロセスを合意形成する…といった具合です。ある意味トップダウン方式ではありますが、合意形成を多段階でおこなっているため、メンバーのモチベーションを高く維持することができます。

経営陣とチームメンバーが一堂に会し、みんなでありたい未来を描くことももちろんOK。以前、とある労働組合にて、1500名の組合員のビジョンとミッションを作る、という挑戦をしました。その際、各地で行われている職場集会にて「組合のあるべき姿」を話し合い、そこで出てきたキーワードを集約、中央集会にて新たなクレドを決定しました。ボトムアップの良い例だと思っています。

Q.合意形成をおこなう際の適切なサイズはどのくらいでしょうか? 

A.多くても10名程度が良いでしょう。というのも、バックキャスティングの合意形成には「全員発言」というプロセスがあります。参加している全員が発言するからこそ、「自分が話し合いの結果に貢献した」という承認欲求を果たせるのです。

それがあまりに大人数になってしまうと、自分の意見を言わずにその場を乗り切る、いわゆるフリーライダーが出てきてしまいます。それでは、バックキャスティングのメリットが発揮できません。もちろん、大人数でも成立できないことはないですが、適切なサイズという意味では、10名前後が良いと考えます。

バックキャスティングを実践してみよう

あなたの組織でバックキャスティングを取り入れるイメージはできたでしょうか。より具体的な実践方法が知りたい方は、ぜひ、バックキャスティング思考実践メソッド体験会@オンライン(https://shikaku-kaigi.jp/exdl/)  にご参加ください。

ご相談・
お問合せ
各種資料
ダウンロード
page
top