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【第35回 知財・情報フェア展示会レポート】AI時代、知財部は「知識」と「組織」をつなぎ意思決定を支える存在へ。

2026.10.5

株式会社HackCampは、2026年9月16日(水)〜18日(金)に東京ビッグサイトで開催された「第35回 2026知財・情報フェア&コンファレンス」に出展しました。本展示会は、研究・技術開発から権利取得、事業化まで、企業の知財戦略に関する最新情報が集まる国内最大級の知財専門展示会で、今年は3日間で15,502名が来場しました。
※2026年知財・情報フェア&カンファレンスHPより

HackCampは今回、進化した「共創ナビ ivan®(イワン)」と、社内の知をつなぐナレッジグラフ技術「GraphRAG」を公開しました。

生成AIによって、特許の調査や分析、アイデア出しは格段に速くなりました。それでも、知財が事業の意思決定につながらないという悩みは残ったままです。今回の出展を通じて見えてきたのは、AIが進化するほど、部門をつなぎ、問い直し、決める「人」の役割が大きくなるということでした。

出展の背景:AIを使っても、知財活用は思うように進まない

昨年の展示会では、多くの来場者から「知財を事業に活かしたいが、どのように進めればよいか分からない」という声をいただきました。

この1年で、知財部門でもAIの活用は広がりました。一方で、AIが出した分析やアイデアが、事業の選択や投資の判断にまでつながっている企業はまだ多くありません。

HackCampはこの1年、共創ナビ ivan®を事業開発に特化したAIエージェントへと進化させ、社内に散らばる情報をつなぐナレッジグラフの開発を進めてきました。

ただし、ツールを入れるだけでは知財は事業につながりません。AIが叩き台をつくり、人が問い直して決める。そのプロセスを組織に根づかせることが必要です。今年の出展では、この「AIと人の共創」による新しい知財活用のかたちを伝えることを目的としました。

地図をつくるのはAI、進む道を決めるのは人

写真:ブース正面

会場を見渡すと、AIを活用した展示の多くは、特許出願や調査業務の効率化をテーマにしていました。その中で、知財を起点としたアイデア創出や事業開発を掲げていたHackCampのブースは、お客様から「ユニークだね」とお声をいただきました。

今年のブースは、3つのメッセージで構成しました。

正面:「散らばる『知』を経営の地図に。」

正面パネルで紹介したのは、ナレッジグラフ技術「GraphRAG」です。特許・技術、市場ニーズ、経営戦略といった社内に散らばる情報の関係性をつなぎ、眠っている知財が「事業の種」や「新用途」につながる道筋を、一枚の地図のようなグラフィックで表現しました。

側面:「守るだけの知財部から、未来をつくる知財部へ」

側面パネルでは、2025年度グッドデザイン賞を受賞した共創ナビ ivan®を紹介。昨年の展示会で初めてお披露目した ivan は、この1年で事業開発に特化したAIエージェントへと進化しています。ブースでは、技術情報を構造化し、用途仮説を出し、その根拠をたどるまでをデモで実演しました。

カウンター:「Human in the Loop 主役は『人』です。」

そして、ブースで最も伝えたかったのがこのメッセージです。

AIは地図をつくり、その上にいくつもの道筋を示してくれます。しかし、どの道を選び、なぜ自社がその道を進むのかを決めるのは人です。HackCampは、共創ナビ ivan® による情報の構造化と、専門ファシリテーターによる対話・合意形成を組み合わせ、AIと人の両輪で知財・技術の事業化を伴走支援しています。

来場者の声:「まさに直面している課題だった」

3日間で約200名の方にブースへお立ち寄りいただきました。会話の中で多く聞かれたのは、知財部の役割の変化を実感しながらも、その進め方が見つからないという声です。

  • まさに知財部が直面している課題。でも、解決の方法が分からず模索していた
  • 知財部の役割は変わっていかなければいけないと思っていた
  • 業務効率化におけるAI活用は進んできており、いよいよ次は知財戦略そのものをどう進めるかというフェーズだが、何から始めたら良いか悩ましい
  • 人とAI、両軸からの支援というのは面白い
  • AIを活用しても、知財活用は思うように進んでいなかった。だからこそ、AI任せにするのではなく、人の意思決定をどう進めるかに焦点を当てているのがいい

AIを使えば知財活用が進む、というわけではない。多くの知財部門がすでにそれを実感しています。AIが出した分析や仮説を、誰がどう受け止め、どう決めるのか。今回の出展で伝えたかった「主役は人」というメッセージが、現場の実感と重なっていることを確かめられた3日間でした。

セミナー申込みは2日間で330件、昨年の2倍超に

会期中は2本のセミナーを開催し、2つのセミナーで合計300件以上のお申込みをいただきました。特に1日目は会場が満員となる大盛況でした。

2つのセミナーに共通していたのは、「AIは可能性を広げる。最終的な判断は人が行う」というメッセージです。

1日目「事業に貢献する知財戦略の考え方とAIを活用した具体的プロセス」(9月16日)

登壇:矢吹 博和(株式会社HackCamp 取締役副社長/共創ナビ ivan® プロダクトオーナー)

AIで調査や分析、アイデア出しは格段に速くなりました。それでも事業の意思決定につながらないのは、AIの性能の問題ではありません。同じ技術を見ても、知財は「独自性・権利性」、R&Dは「実現性・性能」、事業は「顧客価値・収益性」、経営は「戦略適合性・投資判断」で評価します。部門ごとに判断基準が違うかぎり、どれだけ正確な分析があっても組織は動きません。

そこで紹介したのが、AIと人の役割を分けた5つのステップです。

  1. つなぐ:特許・市場・戦略などの情報の関係性を整理する
  2. 仮説をつくる:用途や協業候補を、根拠のある複数の選択肢として出す
  3. 問い直す:各部門が「根拠は?」「実現できるか?」「顧客は対価を払うか?」「自社が取り組む意味は?」と問い、意味づけする
  4. 決めて試す:優先仮説を選び、小さく検証する
  5. 学びを蓄積する:「なぜそう判断したか」を組織のナレッジとして残す

中でも重視したのが、情報に意味づけをして行動につなげる「センスメイキング」です。そして、その場をつくるのが知財部だと提言しました。技術を理解でき、業界を横断して見られ、複数部門と接点を持つ知財部は、全社の「ハブ」になれる位置にいます。

AI時代の知財部に求められるのは、情報を各部門へ翻訳する「ナレッジの編集者」と、判断基準をそろえて次の行動を決める「意思決定のファシリテーター」という、人にしか担えない2つの役割です。

参加者アンケートより(回答70件)

満足度は90%でした。知財活用における課題の1位は「事業部門との連携」(49%)でした。セミナーの中で印象に残ったキーワードでは「他の部門への翻訳」「センスメイキング」「意思決定」が多く挙がりました。

  • 全てAIに丸投げではなく、意思決定は『人』であり、AIはツールであることを改めて感じた
  • センスメイキングは、実務で直面する最大の課題
  • 知財以外の全ての情報をまとめ、かつ伝える部署によって翻訳が必要になると、まさしく今の業務で痛感しているため参考になった

2日目「特許・技術アセットから新用途を見つける:AI活用の最前線」(9月17日)

登壇:矢吹 博和(株式会社HackCamp 取締役副社長/共創ナビ ivan® プロダクトオーナー)

「特許一本」ではなく「特許群」で考える

セミナーではまず、多くの企業で行われている用途探索の限界を指摘しました。対象の特許を読み、関連特許を探し、記載された用途を整理する。この進め方では、どうしても過去の用途に引っ張られ、同じ業界や似た技術の延長から抜け出せません。しかも、特許の件数が増えるほど人の手では追いきれず、使われていない休眠特許まではとても見きれません。

そこで提案したのが、探索の単位を「特許一本」から「特許群」に変えることです。

方法は、GraphRAGで複数の特許を分解してつなぐことです。特許を「技術」「仕組み」「機能」「性能」「制約」などの要素に分け、要素同士の関係をつなぎます。文書が似ているかどうかではなく、要素のつながりをたどることで、「なぜその用途候補なのか」という根拠まで見えるようになります。

特許群で考えると、次のようなメリットがあります。

  • 組み合わせで発想できる:複数の特許を組み合わせ、一本の特許の延長ではない解決策をつくれる
  • 異業種へ展開できる:同じ機能を持つ別の仕組みを探し、他業界の課題とつなげられる
  • 休眠特許を再評価できる:使われていない技術を、新しい課題につなぎ直せる
  • 探索の根拠が残る:候補を選んだ理由を説明でき、次の検討にも再利用できる

一本の特許を探すのではなく、解決の仕組みの組み合わせを探す。セミナーではその具体的な方法やステップをデモ画面をもとに解説しました。

「筋のよさ」を、技術と事業をつなぐパスで説明する

セミナーの前半では特許群をもとにした用途探索の方法を伝えましたが、新しい用途候補が見つかっただけでは、組織は動きません。新しさだけでは事業性を説明できないからです。

用途候補に説得力を持たせるには、保有技術・特許から、機能と仕組み、技術の組み合わせ、顧客課題、新用途と提供価値、事業戦略・中期経営計画、KGI・KPIへの貢献まで、一本の道筋(パス)でつなぐ必要があります。この道筋がつながって初めて、「なぜ自社がこの事業に取り組むのか」を経営や事業部門に説明できるようになります。

GraphRAGでつないだ特許群の関係をたどれば、このパスを根拠とともに示せます。ただし、そのパスを見て「筋がいい」と判断し、選ぶのは人です。セミナーでは、ナレッジグラフは正解を出すものではなく、人が関係性を見ながら対話し、意味づけるための「判断地図」だと伝えました。

参加者アンケートより(回答41件)

満足度は93%でした。印象に残ったキーワードでは「機能(ファンクション)」「パスでつなぐ」「判断軸」が多く挙がりました。

  • 「特許の中の機能に着目するという新しい視点を持つことができた」
  • 「過去に自社特許を起点に用途探索を行ったが、事業につなげることができなかった。当時知っていれば、結果は変わったかもしれない」
  • 「結局決めるのは人なので、対話の題材をうまく作りたいと思っていた。今回の内容に非常に腹落ちした」

展示会を通じて見えたこと:知財部は、人の判断を支える組織と知識のハブ的な存在へ。

3日間を通じて、ブースでもセミナーでも多く聞かれたのが、「AIを活用しても、知財活用は思うように進んでいなかった」という声でした。

AIは調査を速め、用途や事業の候補を広げてくれます。しかし、どの候補を選び、なぜ自社が取り組むのかを決めるのは人です。そして、部門ごとに異なる判断基準をもつ人たちとの目線を合わせ、対話の場をつくる役割を担えるのが、技術を理解し、全社と接点を持つ知財部です。

知財を管理する部門から、AIを使って部門をつなぎ、人の意思決定を支えるハブへ。

HackCampは「AIと人の共創」を掲げ、「変わりたい」「もう一歩踏み出したい」と考える知財部の味方でありたいと考えています。10年以上にわたる組織開発・人材育成の知見を活かし、共創ナビ ivan® とナレッジグラフ、専門ファシリテーターによる伴走はもちろん、無料トライアルワークショップや勉強会、研修など、各フェーズに応じた柔軟な設計で、知財・技術を事業につなげる支援していきます。

ご来場くださった皆さま、セミナーにご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

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