昨今、企業には、ビジネスの成果だけでなく、社会や環境をとりまく課題に対する取り組みも期待されています。そんな中、自社の存在意義や価値観、ありたい姿を世間に掲げ、その目標達成を目指して逆算思考で事業を進める「パーパス経営」が注目されています。
しかし、経営陣がパーパスを打ち出したものの、その真意である「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」が社内に浸透せず、目標への一体感が醸成されていないと感じる経営者やマネジャーは多いのではないでしょうか。
MVV浸透には、現状を整理し視点を揃える「対話」の機会が必要です。MVVを理解した人材は強い人的資本となり、自社を差別化するための大きな力となります。
多くの企業で、組織開発やMVV浸透についての課題を解決してきた「HackCamp」が、パーパス経営を前進させる方法を紹介します。
パーパス経営とは、自社の存在意義や価値観を明確化し、そのパーパスを軸に事業を進めることで様々な形で社会に貢献していく経営スタイルです。パーパスがあることで、自社が社会にもたらす価値を表明できるうえ、組織がどのようなアクションを起こせばいいのかを具体化できます。
パーパス経営が注目を浴びている理由のひとつには、2015年に採択された持続可能な開発目標「SDGs」が挙げられます。SDGsには環境や社会、経済などの観点から17の世界目標が掲げられていますが、その中には企業が率先して取り組むべき課題も含まれており、日本政府も「SDGsアクションプラン」を設定しています。この流れを受けて、企業活動におけるサステナビリティを見直す中で、自社の存在意義を定義し表明する動きが広がりました。
これからますますパーパス経営は注目され、組織の規模に関わらず浸透していくことと思われます。
組織の存在意義を社会に示すパーパス。しかし、経営陣が想いを込めてパーパスを定めても、社員の理解が進まず事業の変革に繋がらないという事例が散見されます。
パーパス経営の成功には、パーパスとMVVが組織に浸透していることが重要です。パーパスやMVVは決めるだけではなく、組織内に浸透させ、経営陣と社員がパーパスに向かって一体となることで初めて事業での実現に向かうことが可能になります。そのためには組織での「対話」が有効であることが示唆されています。
「対話」の重要性を示したのが、2014年8月に経済産業省から公表された日本経済における持続的成長に関する報告書、通称「伊藤レポート」です。このレポートは経済界に大きな一石を投じました。
この中で当時一橋大学教授であった伊藤邦雄氏は「日本の市場がショートターミズム(短期志向)に陥っていることが持続的成長を阻害している」と指摘しました。企業と投資家との「高質の対話」の追求により企業価値の向上を図り、持続的成長に向けた資金獲得を行うことを提言しています。
企業と投資家の「対話・協創」の時代へーー。より具体的な道筋を示したのが、2017年に発表された「伊藤レポート2.0」です。この中で日本企業は、諸外国に比べて戦略的な投資が行われておらず、特に人的資本への投資のパフォーマンスが悪いと指摘されています。「伊藤レポート」は、トップダウンや年功序列のようなレガシー的な企業文化を見直し、人材の能力活性化を促すこと、それを株主や投資家に開示することによって信頼を得る必要があると説いているのです。
このように、「伊藤レポート2.0」では、ステークホルダー間での対話を強化していくことの重要性が言及されています。また経営陣・社員それぞれが会社の企業文化をどのように体現し、定着させるべきかを考え、社員と直接対話する 機会によって、社員が主体的に考えるようになると期待されるといった趣旨のことが述べられています。パーパス経営やMVV浸透が注目されている理由はここにあるのです。
その潮流を受けて、2023年の会計から、有価証券を発行している企業を対象に「人的資本情報」の開示が義務化されました。開示内容は「人材育成方針」「育児休業の取得率」「男女間の賃金差」「女性管理職の比率」など。この開示義務を形だけクリアし、形骸化させていく企業もあるかもしれません。しかし、2023年からは、目標の設定のみでなく、その進捗の報告も義務付けられるため、実質的な取り組みが求められるようになります。
独自指標の作成などで企業文化の改善に本質的に取り組み、パーパス経営を実現するためにその浸透に取り組む企業の価値は大きく向上することでしょう。
人的資本を活性化し企業の価値を上げるMVVの浸透。HackCampでは、組織作りの根幹をなすこの施策には、4点の大切なポイントがあると考えています。
・自分なりに咀嚼する機会を作ること
・ベクトルを合わせること
・定期的な見直しをすること
・ワクワクを大事にすること
以下、順番にチェックしていきましょう。
組織の存在意義やパーパスを打ち出し、社員に理解してもらうよう仕掛けるのは経営陣の役割です。しかしそれを旧態依然と訓示する方法では、社員は自分ごととして捉えられません。トップダウンでは指示待ちから脱却できず、当然社員のモチベーションも向上しません。
トップが決めたMVVが、組織全体、自分の部門、自分のグループ、そして自分自身やお客様にとって、具体的にどういう意味を持つのか、それぞれが考える機会を作っている企業がどれくらいあるでしょうか?
メッセージを受け取る社員側には準備が必要です。自分たちで考え咀嚼しながら創り上げるステップを経ることによって、初めてMVVが自分ごとになり、責任をもってコミットできるようになります。そこでHackCampのようなワークショップを活用することは有効な一手です。ワークショップでMVVを自分ごととして解釈しなおす体験は、パーパスを創り上げた経営陣が経たプロセスを追体験することにもなります。この過程を経ることで、MVVの理解が深まるだけでなく、共感や納得感の醸成へとつながり、メンバーの組織への関わり方が主体的となり行動が変わってくるでしょう。
企業は、様々な役割の人が大勢それぞれの仕事をして成り立っています。少し先の流れも読めないようなVUCA時代において、トップダウンで一人ひとりに最適な指示を出すことは非常に難しいことです。組織全体が何を目標としてどこへ向かっているのかを各自が把握して自律的に動くことができれば、誤解や出戻りが減り、スピード感のある経営ができるようになります。
急速なAI/DX化が進む中で、「自律的な行動」という「人にしかできないこと」は非常に価値があります。「自律的な行動」と「自分勝手な動き」の違いは、背後にあるコミュニケーションの質と量、そして社員と経営陣のベクトルが合っているかにかかっているのです。
MVVはそのベクトルを指し示す北極星のような役割を果たしますが、その方向はすなわちどういう方向なのか、パーパスやビジョンが示すありたい姿は具体的にはどういうことを示すのか、メンバー間で確認することで、意思決定のスピードは加速します。
流動的でこれまでの常識が通用しないとされるVUCA時代。与えられた計画どおり仕事を遂行すれば目標が達成できるという「常識」は、もはや過去のものです。少し先の見通しもつきにくい中、常に確認しておきたいのは、自社の現在地から見たパーパスまでの距離と周囲の状況。アクションプランを時代のニーズや制約に合わせて社内で自律的に見直し、フレキシブルに変化させていける柔軟性が大切です。変化する時代と同じスピードで変化していける組織づくりが必須になってくるでしょう。
組織で働く一人ひとりにとって、仕事でもっともモチベーションを削ぐことのひとつは「やらされ感」ではないでしょうか。経営戦略のスペシャリストであり、一橋大学ビジネススクールの名和高司教授は「掲げるパーパスは『志』であり、社員が共感しワクワクできるものであることが大事」(※1)と述べています。
論理的・分析的な戦略だけでは、社員の心に火はつきません。ワークショップなどでの共体験や、対話などの接触機会を通して社員と共創することで、自社のユニークネスを確認し、同じ「北極星」を見上げるプロセスが大切です。社員の心をワクワクさせることが、人を動かしひいては大きな流れに繋がるのです。
HackCampの「理念浸透ワークショップ」は以上4つのMVV浸透に欠かせないポイントをすべて網羅したプログラム。短時間で理念浸透を図るには非常に効率的な手段です。
(※1)いま日本企業が目指すべきパーパス経営 個人を突き動かす志を引き出し、組織の力にする人事の役割とは(日本の人事部)
HackCampの「理念浸透ワークショップ」は、MVVの現場への浸透・自分ごと化を進めるためのワークショップ型の対話プログラム。ワークを活用してMVV浸透を大きく前進させた企業が、フェムテックカンパニーとして美容品や下着などの企画開発を手がける「シルキースタイル」様です。
ワークショップ前にはアセスメントを行います。今回はMVVと業務の繋がりについて、チームの状況などについて簡易アンケートを実施することからプログラムを始めました。その結果、創業者中心のスモールビジネスから企業へと組織化していくフェーズへと歩みを進める中で、MVVへの想いに役職などのレイヤーの違いで温度差があることが表面化しました。
これにより、現場は自分たちなりに考えて業務を進めているものの、組織の期待と合っているか不安を抱えている、という現状を把握できました。
HackCampのファシリテーターは、問いづくりを通じてMVVを自分たちなりに考える「テーマ探究」、ビジョンを実現した3年後のありたい姿を話し合う「合意形成」、MVVに基づいたアクションに繋げる「個人目標の作成・共有」の3ステップを用意しました。
HackCampの対話ワークショップは、MVVを意識した「行動」につなげていくためのアウトプットが必ずセットになっており、具体的でユニーク。必ず全員が意見を出せる仕組みになっているほか、アイデア出しだけで終わらず、必ずチーム・個人のアクションプランやタスクにまで落とし込める設計が特徴です。
アクションプランに沿って動き出した同社。ワークショップにより心理的安全性が高まったおかげで活発にアイデアが出るようになり、コミュニケーションが密になるなど早くも変化が出ている様子です。MVVに向けて積極的に取り組んだ社員には「MVVアクション賞」が贈られるなど、社内のワクワク感が伝わる取り組みも光ります。
シルキースタイル様の事例は
【前編】「ミッション・ビジョン・バリュー」の存在意義を改めて問う。 MVVを一人ひとりが自分事化するためのワークショップ
【後編】チーム全員でMVVの体現を!目指すは部署ごとの3年後のありたい姿の共有とロードマップ
上記でご覧いただけます。
比較的新しい取り組みである「MVV浸透」。施策チームの中でもビジョンに混乱が起きている企業・組織も少なくありません。
ワクワクを共有し社員の心に火をつけ、パーパス経営に向けてアクションプランを共創するという一般的な道筋は理解したものの、自社では具体的にどうすればよいのか課題感をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。ぜひ担当者様の困りごとや想いをお聞かせください。HackCampが、お話を可視化しながら整理していきます。
内省、いわゆる「壁打ち」の機会として、ぜひご活用ください。